2014 年 54 巻 6 号 p. 515-517
症例は67歳女性である.咀嚼障害と開口時下顎の右側偏倚を主訴に来院した.神経学的には,右咀嚼筋群の萎縮がみられた,顔面感覚に異常はみとめなかった.発症時に感冒症状をともなっており,脳脊髄液検査では軽度の細胞増多をみとめた.頭部MRIで,脳幹あるいは脳神経に形態異常はみとめなかった.本症例のように,片側下顎神経運動枝のみが障害される「pure trigeminal motor neuropathy」は,ウイルス感染との関与が指摘されているが,その病態は明らかでない.