日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集 薬理学領域における磁気共鳴画像法の可能性
常磁性体を架け橋とするEPR・MRI研究法の展開
藤井 博匡江本 美穂
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 140 巻 4 号 p. 156-160

詳細
抄録

がんや炎症性疾患など様々な疾病において多量の活性酸素種が生成され,同時に抗酸化物質の減少や抗酸化性酵素の活性低下について報告されてきた.このような病態について体内の抗酸化特性の変動を定量的に解析し,酸化ストレス状態を非侵襲的にイメージングとして視覚化する画像技術は,病態の解析だけにとどまらず,新たな診断法や医薬品の開発に繋がる,非常に重要な手法と考えられている.近年,in vivo状態での活性酸素種の影響を非侵襲的に解析するため,常磁性物質であるナイトロオキシド化合物が酸化還元マーカー(レドックスマーカー)としてEPR(electron paramagnetic resonance)やMRI(magnetic resonance imaging)において活用され始めた.私たちは,EPRイメージングを従来より高速に稼働しうるシステムの構築に成功し,1分以内という短時間で3次元EPRイメージング画像を撮像できるシステムを作り上げた.ナイトロオキシド化合物をレドックス感受性イメージング剤として用いることで,動物体内でのレドックス状態・酸化ストレスの影響を非侵襲的に画像化することが可能となってきた.一方,ナイトロオキシド化合物はMRI法においてもレドックス感受性造影剤として働くため,ナイトロオキシド分子の体内分布やレドックス状態についてEPRイメージング法と同様に視覚化できるようになった.高速化されたEPRイメージング法とMRIの手法を同じように活用することで,MRIで撮像した解剖画像上にEPRから得たレドックス情報を画像として重ね合わせることができ,他の手法では得られない貴重な生体情報を提供できるようになった.本稿では,常磁性物質であるナイトロオキシドを仲立ちとして,EPR・MRI両手法を活用する研究の特色や利点について紹介する.

著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top