日本薬理学雑誌
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特集 HMGB1-RAGE系を標的とする創薬
『トロンボモジュリンによる血管内聖域化』 生体侵襲性HMGB1-RAGEシステムと遺伝子組換えトロンボモジュリンによるインターベンション
伊藤 隆史
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キーワード: 敗血症, SIRS, DIC, アラーミン
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2014 年 143 巻 1 号 p. 18-21

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抄録

High mobility group box 1 protein(HMGB1)はほとんど全ての有核細胞に豊富に含まれているDNA結合タンパク質である.核内においては,DNAの構造を維持し,転写を調節する役目を担っているが,細胞がダメージを被ったり,活性化されたりすると,受動的もしくは能動的に細胞外に放出され,危機的状況を周囲に知らしめる警笛の役割を果たす.これは一種の生体防御反応であるが,敗血症の際には過剰なHMGB1が全身を循環し,全身性炎症反応症候群(SIRS)や播種性血管内凝固症候群(DIC)の引き金となりうる.DIC治療薬として近年広く使用されるようになった遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤は,プロテインCを活性化して抗凝固作用を発揮するが,HMGB1の中和,分解を促進する作用も併せ持っている.本稿では,細胞外HMGB1の作用とトロンボモジュリン製剤によるインターベンションについて概説する.

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