日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
訪問リハビリテーション利用者における在宅生活継続を阻害する要因
大沼 剛牧迫 飛雄馬阿部 勉三浦 久幸島田 裕之
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 49 巻 2 号 p. 214-221

詳細
抄録

目的:訪問リハビリテーションの継続を阻害する要因を明らかにすることを目的とした.方法:訪問リハビリテーションを新規開始した311名(平均年齢77.5±11.0,男性154名)を対象とした.対象者の訪問開始時における年齢,性別,要介護度,主疾患,罹患年数,疾病の有無,Barthel Index,歩行可否,認知症性老人の日常生活自立度,同居者の有無を調査した.対象者のうち,2年以上訪問を継続した者を訪問継続群(73名),2年以内に死亡や入院,入所の理由により在宅生活が中止となった者を在宅生活中止群(73名)とした.死亡,入院,入所以外の理由で訪問リハビリテーションを終了した者(77名)と訪問継続中であるが2年に満たない者(88名)は分析から除外した.結果:訪問開始時の各変数を群間で比較した結果,呼吸器疾患や悪性新生物を有する,歩行が困難,認知機能障害を有する者が訪問継続群に比べて在宅生活中止群で有意に多く(p<0.05),日常生活活動能力の指標であるBarthel Indexが在宅生活中止群で有意に低かった(p<0.05).在宅生活中止の有無を従属変数とし,年齢,性別,同居者の有無及び有意差の認められた調査項目を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果,呼吸器疾患あり(オッズ比4.35,95%信頼区間1.06~17.83,p=0.04),悪性新生物あり(オッズ比13.46,95%信頼区間2.13~85.00,p<0.01),Barthel Index(オッズ比0.97,95%信頼区間0.95~0.99,p<0.01)が在宅生活中止と有意に関連した.結論:呼吸器疾患や悪性新生物を有する訪問リハビリテーション利用者は2年以内に在宅生活が中止となる危険が高いことが示された.また,在宅生活の継続には日常生活活動能力の高さが関連要因となり,訪問リハビリテーション充実の必要性が示唆された.

著者関連情報
© 2012 一般社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top