タイの統計事業は分散型で,国家統計局(National Statistical Office: NSO)だけでなくその他の省庁がそれぞれの管轄事業に関わる統計を作成している。このことがタイの統計資料の入手を難しくしてきたといえる。NSOが調査・刊行する統計資料は販売されており,海外からの購入にも対応しているが,その他の省庁の統計資料は販売しておらず,各省庁の担当部署を訪問して入手しなければならない。また,ほとんどの省庁が基本的に海外への送付を行っていないため,定期的に入手するのはかなり難しい。
しかし,インターネット時代となった現在,各省庁が統計情報をWebサイト上で公開するようになり,統計情報は格段に入手しやすくなった。各省庁のWebサイトには英語版があるが,タイ語版でないと統計にアクセスできないケースも少なくないという難点はある。ただ統計情報そのものはほとんどが英文併記なので,アクセス方法がわかれば統計データを利用できる。
本稿ではまずNSOとタイの統計事業の概要を述べた後,NSOおよび各省庁が作成する主要統計資料の内容とアクセス方法を主題別に紹介したい。
1914年4月,NSOの前身となる経済予測局が大蔵省に設置された。1916年には最初の統計年鑑が刊行されている。その後,いくたびかの組織改編を経て,1963年5月,総理府に現在のNSOが設立された。2002年の行政改革以降は情報・通信技術省に移管されている。
上述のとおりタイの統計事業は分散型で,各省庁がそれぞれ独自に調査を行っているが,統計調査が重複していたり,調査方法が標準化されていないためどれが正しいデータかわからなかったりするという問題があった。そういった無駄を排し,統計を利用しやすいものにするため,2007年に公布された統計法ではNSOが国の統計事業のマスタープランを策定し,各省庁の統計事業の調整や標準化を図ることが定められた。2011年には「2011-2015国家統計マスタープラン」が閣議決定されている。マスタープランにしたがって,情報・通信技術大臣を委員長とし,NSOに事務局をおく国家統計システム運営委員会が設けられた。同委員会の下には21のセクター別に下部委員会が置かれ,各セクター委員会は年次報告書を提出することになっている。このような体制基盤が整ってきたところで,NSOは今後,分散型の国家統計を統一性のあるシステムにしていくことを目標に掲げている。
地域レベルでは,NSOはバンコク都をのぞく75県に支所を置き,全国の統計調査の指導,調整にあたっている。バンコク都は独自に統計局をもっているため,NSOの支所にはなっていないが,連携を図っている。各支所のリストはNSOのWebサイトに掲載されており(http://web.nso.go.th/en/abt/cont_prov.htm),各支所のE-mailアドレスも出ている。
NSOでは下記のような統計調査を実施している。
人口センサス,農業センサス,工業センサス,商業・サービス業センサスの4種が実施されている。NSOの資料によれば,センサスはすべて10年ごとの調査とされているが,人口センサス以外は調査頻度が不定だった時期も長かった。各センサスの内容については4章で詳述する。
定期的に実施されるサーベイと,不定期に実施されるサーベイがあり,主題は非常に多岐にわたっている。定期的サーベイはNSOの資料やWebサイトによると表1のとおりである。調査内容や実施頻度は変更されることもある。
周期 | 主題 |
---|---|
月 | 労働力(報告書は季刊) |
年 | 家計調査,移住,民間賃金,非正規雇用,事業所IT利用,世帯IT利用,小売業,技能開発,建設動向 |
隔年 | 世帯エネルギー消費,商業・サービス業,ホテル・ゲストハウス,公務員生活水準,健康・福祉,環境,家内労働,物流業 |
3年 | 読書,喫煙・飲酒,生殖系健康,文化 |
4年 | スポーツ・精神衛生 |
5年 | 民間病院,民間非営利団体,農業(センサス中間),児童青年,建設業,時間利用,バス輸送 |
主要なサーベイは4章で紹介する。
現在,かなりの統計がWebサイト上で見られるが,各種統計の掲載範囲や様式は統一されていない。10年以上の時系列データを掲載するものもあれば,年度によってデータの精粗があるものも見受けられる。統計の本編ではなくサマリーだけの場合もある。
なお,本稿では文末や項目末尾にURLを記載することにしたが,必要に応じて文中に記す場合もある。
3.1 NSOのWebサイトNSOWebサイトのトップページ(http://web.nso.go.th/)で「Statistical Data」のタブを選択すると,画面左のメニュー画面に「Statistical Themes (Economics, Population & Society, Environment & Energy, Industry & Construction, ICT, Agriculture & Fishery)」および「Census」というカテゴリーが表示される。カテゴリーを選択すると,そのカテゴリーに分類された統計のリストが出てくるので,そこから目的の統計を選択する。それぞれの統計データの掲載年次,フォーマット(ExcelまたはPDF),内容(全データまたはサマリー)は統一されていないが,全データを掲載しているものもかなりある。ただし,NSOは統計資料を販売しているため,Webで全文を閲覧できる資料はある程度年数を経たものになる。
3.2 政府各省の統計データへのアクセス各省庁の統計データを調べるには,「Thailand e-Government」というポータルサイトをお勧めしたい。統計情報検索用のサイトではないが,統計の作成省庁・部局名がわかっている場合や,各省庁・部局の事業内容別に統計の有無を調べる場合に便利である。URL http://www.egov.go.th/default.aspxからアクセスするとタイ語版が表示されるので,まず画面右上のイギリス国旗をクリックして英語版に切り替える。英語版の画面右上の「Government Agencies」という小さな文字のタブをクリックすると,各省のエンブレムが英文名称とともに表示される。目的の省のエンブレムをクリックすると,「Sub-Divisions」というリストにその省の各部局名が出てくる。部局名を選択すると,その部局のWebサイトのURLを記載したページが出てくる。URLをクリックするとタイ語版のトップページが表示されるが,たいていはトップページの右上に言語選択アイコンがある。ほとんどの場合,英語版のアイコンはイギリス国旗である。英語版でもコンテンツメニューなどはタイ語だったり,コンテンツそのものはタイ語だったりするので,必ずしも確実かつ手軽に見られるとは限らないが,かなりのデータが利用可能である。
なお,パソコンの設定にもよるかもしれないが,「Thailand e-Government」は接続エラーの表示が出ても,ほとんどの場合,その直後に再検索すると接続できる。
以下に主題別に主要な統計資料を紹介したい。Webサイトで見られるものを中心にとりあげる。基本的な統計はアクセス方法が多少煩雑でも紹介する。
4.1 総合統計年鑑 (1) Statistical yearbook Thailand(NSO)NSOが各省庁の統計データも取り入れて編纂している。現在の年鑑は23部門に243種の統計を収録する。各部門の内容は,人口・住宅,労働,教育・宗教,保健衛生,社会保障,ジェンダー,家計,その他社会統計(主に訴訟・犯罪),国民所得,農林水産業,鉱工業,エネルギー,商業・貿易,運輸,郵便・通信・情報技術,観光,金融,財政,物価,科学技術・特許,その他経済統計,天然資源・環境,気象。解説,データともタイ語・英文併記である。統計年鑑はWebサイトには掲載されていない。
(2) Thailand in figures(Alfa Research)民間の調査会社Alfa Research社が発行する総合統計年鑑で,Vol.1全国編,Vol.2県別編の2分冊からなる。表記は解説,データともすべて英文である。全国編の部門構成はNSOの統計年鑑とはかなり異なっており,特に農業,エネルギー,製造業,商業銀行のデータが充実している。本書の最大の特徴はVol.2の県別統計であろう。人口,社会,保健,地理,県内総生産,平均家計所得,電力消費等の統計が県別に掲載されている。データの出所は各省庁の統計である。官庁発行の統計資料には英文で県別データを1冊にまとめたものはないので,よく利用される資料である。なお,これは冊子体しかなく,Webサイト上での提供はないが,民間出版社発行なので現地書店で購入可能である。
日本の重要な投資先であるタイについては,最近では地域別の統計に関する問い合わせも増えている。センサスや各種サーベイの報告書には県別にデータが掲載されている。センサスの結果は県別に報告書が作成されている。特定の県にしぼって各種主題の統計データを調べる場合は,タイ語表示ではあるが,NSOのWebサイトにある県別統計が便利である。タイ語版トップページからしかアクセスできないが,下記URLの検索画面で県と統計主題を選択すると統計データが表示される(http://service.nso.go.th/nso/thailand/thailand.jsp)。
英語で各県統計を掲載しているのが,総合統計年鑑の項でも紹介した「Thailand in figures」である。内容は総合統計年鑑の項を参照されたい。
4.3 人口センサスPopulation and housing census(NSO)
NSOが10年に1度実施する国勢調査である。今までに,1980年,1990年,2000年,2010年の4回実施されている。最近,2010年センサスの全国,地域別,県別報告書が刊行された。冊子またはCD-ROM版が購入可能である。
宗教,国籍,言語,教育レベル,識字,婚姻,子供の数,出生地,移住者,土地所有,住宅規模,料理に使う燃料,トイレのタイプ,水の入手源,家電・自動車所有等の調査結果が収録されている。Webサイトでは1990年,2000年センサスの結果が県別に検索できる(http://web.nso.go.th/en/census/poph/cen_poph.htm)。
4.4 工業センサス/サーベイIndustrial census / survey(NSO)
内容は製造業の事業所統計であり,事業所数や就労人数,事業所の資産,収益等のデータを収録している。工業製品の生産に関するデータはない。
NSOの資料によれば,工業センサスは1964年,1997年,2007年の3回実施されている。1997年以降,10年に1度のセンサスとして確立されたようだが,2012年には次項の商業・サービス業センサスと統合された。第1回の1964年の後はかなり間隔があいているが,1968年から1980年までほぼ1~2年に1回のペースで「Report of the industrial census」と題する資料が発行されている。これはセンサス本調査とは内容に若干の違いがある。1983年以降は同様の調査が「Industrial survey」として1~2年に1回のペースで発行されており,2000年,2001年,2003年には「Manufacturing survey report」として発行されている。
Webサイトでは「Industrial census 2007」は全文がExcelファイルで閲覧可能である。タブやメニューでCensusを選択するとアクセスできる(http://web.nso.go.th/en/survey/construction/industrial_07.htm)。
4.5 商業・サービス業センサス/サーベイBusiness trade and services census / survey(NSO)
内容は,商業・サービス業の事業所統計で,事業所数や就労人数,事業所の資産,収益等のデータを収録するもので,商品やサービスの生産に関するデータはない。
NSOの資料によれば,第1回の調査は1966年。その後は1988年,2002年に実施されたと推定される。上述のとおり,2012年には工業センサスと統合された。1968~1972年,1976~1978年,1980~1981年には,「Report census of business trade and services」と題する報告書が発行されているが,センサス本調査とは内容が若干異なる。同様の調査が1983年以降2010年まで,「Report of business trade and services survey」と題してほぼ1~2年に1回のペースで刊行されている。Webサイトでは2008年版の全文がPDFファイルで閲覧可能である(http://web.nso.go.th/en/survey/bts/bts2008.htm)。
4.6 金融統計タイ中央銀行のWebサイトでは,英文のトップページから「Statistics」のタブを選択すると,金融市場,経済・金融,金融機関,決済システム,地域経済・金融,主要経済指標の6項目が表示される。各項目をクリックすると統計リストが出てくる。画面左側のメニューにある「All statistics & contact persons」は166の統計名および担当者名とその電話番号まで掲載されている。統計項目によって異なるが10~20年遡ってデータを検索することもできる。統計はすべて英文で見られる(http://www.bot.or.th/English/Statistics/Pages/index1.aspx)。
4.7 外国投資統計投資事業の認可を行う投資委員会(Office of the Board of Investment: BOI,Ministry of Industry)は,外国投資認可事業の主要投資国の投資データを毎月発表している。現在,同委員会のWebサイトでは2009年1月から2012年12月までのデータが掲載されている。また,外国投資年次報告では国別の投資事業データがあり,BOIが認可した投資企業リストも掲載されている。現在,Webサイトでは2007年から2012年までの年次報告が閲覧できる。BOIのWebサイトは外国投資の認可機関にふさわしく言語選択肢が8種類あり,日本語を選択して「リソースセンター」のタブをクリックすると,「各種統計」の項目の中に「外国直接投資」という表示が出てくる。ここから先は英文メニューになるが,月次統計,年次統計がある。データは英文のPDF版である(月次統計のサマリーはタイ語のみだが,統計データは英文)。他に「ビジネス統計」では工業生産指標,民間投資指標などを8種の言語別表記で掲載している(http://www.boi.go.th/index.php?page=index&language=ja)。
4.8 貿易統計貿易統計は商務省(Ministry of Commerce)のWebサイトからアクセスできる(http://www2.moc.go.th/main.php?filename=index_design4_en)。トップページ左側のメインメニュー下欄にカラー表示されている「Foreign Trade Statistics of Thailand」をクリックして統計ページが出てきたら,左側のメニュー欄からMENUCOM(ENG)を選択。すると英文の統計データメニューが出てくる。これは検索専用で,年,月,品目,通貨,相手国等を選択して,選択画面右下の「Preview report>>」をクリックすると,該当の統計データが表示される。1991年以降20年分の統計が検索できる。
4.9 国民所得統計経済社会開発5か年計画を策定している総理府の経済社会開発庁(Office of the National Economic and Social Development Board: NESDB, Office of the Prime Minister)が,国民所得関連の資料を発行しており,同庁のWebサイトで閲覧可能である。英文Webサイトで「Economic and Social Development」のタブをクリックすると表示されるメニューから「National Accounts」を選択すると資料リストが出てくる。
掲載されているデータは,国民所得,四半期GDP,域内・県内総生産,投入産出表,資本ストック,資金循環表,非営利サテライト勘定である。各項目をクリックすると,統計のリストが出てくる。統計によって対象年代は異なる(http://eng.nesdb.go.th/Default.aspx?tabid=317)。
4.10 労働統計NSOのWebサイトの「Statistical Themes」から「Population & Society」を選択すると,同Webサイトで掲載している労働統計リストが出てくる。現在掲載しているのは,事業所労働需要,高学歴マンパワー,家内労働,非正規雇用労働,労働力の各調査結果だが,なかでも労働力調査はNSOの主要な定期調査統計のひとつである。
(1) 労働力調査(Labor force Survey)(NSO)NSOが1963年から行っている調査である。現在は毎月実施されており,統計データは四半期ごとにまとめて刊行されるが,Webサイトには毎月のサマリーレポートが掲載されている。内容は雇用者数,非雇用者数,自宅待機者数,雇用率,非正規雇用者数等の全国,地域別のデータ。性別,学歴別,職種別,産業別,収入別など詳細な調査である。調査対象年齢は15歳以上(2004年までは13歳以上)。Webサイトには,2006年,2008年(PDF),2009年(Excel),2012年(サマリー)がある(http://web.nso.go.th/en/survey/lfs/lfs2012.htm)。
(2) 労働保護福祉統計年鑑(Yearbook of labour protection and welfare statistics)(労働省労働保護福祉局)2001年版までは「Yearbook of labour statistics」というタイトルで出ていた。NSOの労働統計ではカバーされていない統計を掲載する。最低賃金,平均賃金,福利厚生,労働災害,労使関係,労働生産性,労働者福祉などの県別データを掲載している。Ministry of LabourのDepartment of Labour Protection and Welfare のWebサイトのトップページ(タイ語)最下段の上にある4つの青枠のうち,右から2つ目の青枠内の「Yearbook」という英語部分をクリックすると,2553(2010)年までの5か年の統計年鑑が選択できる。年度を選択するとExcel表のリストが表示される。タイ語が文字化けしているリストだが,目次(英語のCONTENTS)と数字の統計表番号は見分けがつく。表を開けてみれば英文併記なので見るのに問題はない(http://www.labour.go.th/th/index.php/year-book)。
4.11 家計統計Household socio-economic survey(NSO)
毎月全県で調査が行われているが,報告書は年刊で全国編と各地域編が発行される。世帯の平均月収,平均支出,負債,所得分布,資産(住宅・土地建物・車),世帯主の性・年齢,住宅のタイプ・建築素材等のデータを収録する。現在,Webサイトで見られるのは2007年版のみ(Excelで全文)である(http://web.nso.go.th/en/survey/house_seco/socio.htm)。
4.12 農業統計 (1) 農業センサス(NSO)最初の農業センサスは1950年(現NSO設立前)に行われており,その後,1963年,1978年,1993年,2003年に実施されている。調査内容は土地所有,土地利用,契約農業,作付面積,収穫面積,肥料,農薬,農機,農村世帯状況等。10年ごとのセンサスの中間にはIntercensal surveyが実施されており,現在,その2008年版が最新である。Webサイトには2003年センサスの最終レポートが掲載されているが,統計データ表はない。
(2) 農業統計年鑑(農業・協同組合省農業経済局)農林水産物生産量,作付面積,収穫面積,灌漑(かんがい),土地利用,農林水産物貿易等を掲載する統計年鑑。生産統計は県別データ,過去10年の全国データ(一部項目を除く)を掲載する。
農業経済局(Department of Agricultural Economics)のWebサイトで2009~2012年版がPDF版で閲覧可能だが,英文版サイトからはアクセスできない。タイ語版サイトの左側の2冊の本の写真の下の文字をクリックすると出版物リスト(表紙写真入り)が出てくるが,現状では右列の上から2番目に農業統計年鑑が掲載してあり,年度をクリックするとPDF版が表示される。年鑑本文は解説も統計データもすべて英文併記である(http://122.154.14.16/ewtadmin/ewt/oae_web/download/download_journal/yearbook54.pdf)。
4.13 エネルギー統計エネルギー省エネルギー政策・計画局(Energy Policy and Planning Office:EPPO, Ministry of Energy)が,エネルギー統計年鑑(Energy Statistics Yearbook)を発行している。内容は原油,天然ガス等の輸入・消費,発電,電力消費,石油製品価格等である。この年鑑のPDF版が同局のWebサイトに掲載されている。英文Webサイトで「Statistics」のタブを選択すると表示される画面で「EPPO Energy Yearbook」を選択すると年鑑が閲覧できる。現在,掲載されているのは2010年版~2012年版で,本文,データとも英文である(http://www.eppo.go.th/info/index.html)。
4.14 環境統計 (1) Environment statistics(NSO)NSOが隔年に発行している環境統計である。大気汚染,土地・土壌,水資源,森林,鉱物資源・エネルギー,固形・危険廃棄物などの項目からなり,直接に環境問題を示すデータより,環境資源の利用や消費の実態を把握するデータが多い。Webサイトでは2008年版が全文Excelファイルで閲覧可能である(http://web.nso.go.th/en/survey/env/env_2008.htm)。
(2) Thailand state of pollution report天然資源・環境省公害管理局(Pollution Control Department, Ministry of Natural Resources and Environment)が刊行している。統計書ではないが,統計データも収録する。珍しく海外への送付も行っている。Webサイトでは同資料の英文サマリー版「Thailand state of environment」が閲覧できる。同局の英文Webサイトのメニューから「Public Relations」,「Publications」という順で選択すれば見つかるはずだ。現在,2011年版がアップされている。内容は騒音,水質,廃棄物,年間の主な環境事業,公害管理に関する報告書で,解説,写真,図表とともに統計データも掲載されている(http://www.pcd.go.th/public/Publications/en_print_report.cfm?task=en_report2554)。
4.15 国家予算総理府予算局(Bureau of the Budget,Office of the Prime Minister)を国家予算の省庁別の配賦額,執行額を掲載する年報が刊行している。同局のWebサイトには2001年版から2013年版までPDFで掲載されているが,すべてタイ語である(http://www.bb.go.th/bbhome/page.asp?option=content&dsc=%E0%CD%A1%CA%D2%C3%A7%BA%BB%C3%D0%C1%D2%B3&folddsc=29007)。
英文の予算資料として「Budget in brief」(年刊)がある。内容は各年度の予算の概要と解説で,予算局の英文Webサイトの「Main Menu」にある。現在,1999年版から2012年版まで掲載されている(http://www.bb.go.th/bbhomeeng/page.asp?option=content&dsc=Budget+in+Brief&folddsc=04003)。
タイの統計資料は入手が容易ではなく,Webサイト上のデータもタイ語の壁があるためアクセスしにくいことは否めない。そこで日本語でタイの統計データが得られる資料を補足的に使うことをおすすめしたい。ともに冊子体であり,また,どんなデータも揃っているわけではないが,下記の資料を紹介しておきたい。
(1) 週刊タイ経済(Thai Keizai Pub. Co., Ltd.)タイで発行されている日本人による日本人のためのタイ経済情報紙。中央銀行発表の主要経済指標,金融市場データ,政府収入,政府財政統計,自動車生産・輸出台数,民間消費統計,主要製品生産概況,不動産事業概況,インフレ率等,経済・産業関連の最新の統計データを掲載している。情報源は省庁や業界団体のデータである。
(2) タイ国経済概況(隔年刊)(バンコク日本人商工会議所)タイ駐在の日本人ビジネスマンがタイの経済・産業・社会動向を各業界の強みを生かして執筆する概説書である。省庁や業界団体をはじめ幅広い情報源のデータを掲載している。掲載統計の例をあげると,教育(在学率,留学生,日本語学習者等),労働・賃金(日系企業学歴・職種別初任給,労災発生状況等),産業動向(加工食品輸出,家電製品輸出実績,国籍別訪タイ旅行者,媒体別広告費推移,主要外食チェーンの店舗数)等である。
今回,広く利用可能な統計を紹介するため,主にWebサイトで検索可能なものをとりあげたが,アクセス方法の説明があまりにも煩雑になるものは紹介を断念した。統計情報そのものは英文併記のものが多いので大変残念である。E-Government等を活用して検索に挑戦してみると,まだまださまざまな統計を見つけられるはずだ。
Webサイトの統計情報が今後どのように整備されていくかわからないが,現状では過去の統計まで遡って掲載しているものは少なく,アーカイブ的な性格のものはない。過去に遡って時系列データを調べる場合を想定すると,当面,図書館としては冊子体の統計書の入手を継続するか,定期的にWebサイト上のデータを保存する必要があるだろう。