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連載
研究・実務に役立つ!リーガル・リサーチ入門
第12回 法分野における人物・図書館情報
いしかわ まりこ
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2013 年 56 巻 6 号 p. 374-379

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1. はじめに

連載では,法令そして判例についての基礎的な知識とそれらの調べ方を述べてきたが,国内法についてのリサーチ案内は今回が最終である。この回では,順序として論文検索を題材とすることが期待されているかもしれない。が,法令,判例の解説文献の探し方については,本連載中に立法担当者論文や逐条解説書1)2),判例評釈論文3)の各項で,解説をしている。また,それら以外の文献の探し方は,適切な文献索引やそのデータベース(DB)を知れば,さほど難しい技術があるわけではなく,その検索ツールについては『リーガル・リサーチ』第4版4)に詳細な記述があり,本誌の読者には十分と考える。

そこで本号では,この分野の人物,具体的には裁判官,弁護士,司法書士,行政書士,弁理士,研究者の執筆物に焦点をあてながら,人物の検索注1)について述べ,リーガル・リサーチを行う際に有用な書店や図書館を紹介する。

2. 裁判官

裁判官の役割等については,裁判所Webサイト内に解説があるので確認されたい。

http://www.courts.go.jp/saiban/zinbutu/saibankan/

2.1 裁判官と担当事件/裁判官の検索

裁判官の執筆になるものとしては,言うまでもなく判決書(裁判例)であるが,裁判例末尾には担当裁判官名がある。そこで,裁判官名により判例の検索をするならば,担当裁判官の解釈の傾向調査につなげられる場合もある。有料の判例DBでは,キーワードとして裁判官氏名またはその一部を用いる検索が可能である。また,これらの中には,検索テンプレートに「裁判官名」欄を用意している製品として,「Westlaw Japan」(ウエストロー・ジャパン)があり,裁判官の経歴と当DBに収録された担当裁判例へのリンクがある。

このほか,裁判官検索ができる無料のWebサイト,印刷体資料は以下の通りである。

  • •   e-hoki(新日本法規出版株式会社)http://www.e-hoki.com/judge/index_6.html

『裁判所・法務省・検察庁職員録』年刊(法曹会)

『司法大観:裁判所の部』4年に一度刊行,(法曹会)非売品 最新版は平成23年度版

『全裁判官経歴総覧:期別異動一覧編』第5版,2010年12月(全裁判官経歴総覧編集委員会編/公人社)

『裁判官Who's Who:首都圏編』2004年12月(現代人文社)

『裁判官Who's Who:東京地裁・高裁編』2002年5月(現代人文社)

2.2 判例の囲み記事・解説コラム

判例を読むというのは,そうたやすいことではない。何が論点なのか,何を争っている訴訟なのか,何度読んでもつかめないということも少なくない。その際に助けとなる記事が判例専門雑誌に収録されており,裁判官や最高裁判所調査官によって書かれていると言われている。専門誌に収録された判例の冒頭等に付され,判例そのものとの区別がつくように囲み枠をつけたり,解説と書かれているものがそれにあたる。立ち入った論評をしないせいか,どの専門誌の記事にも不思議なことに署名はなく,論文とは扱いの異なるものである。そこで,この種の記事は評釈や解説論文と区別する意味合いから,囲み記事,解説コラムなどと言われている。特報扱い等になっている事例に添えられており,収録裁判例のすべてに付されているわけではないが,最高裁,下級裁判所を問わず付されている。何が争点の事例であるか,上訴された裁判の場合には一審,二審の経緯と判断,当判例の先例ともなる別の裁判例,学説の整理とその紹介などをしている。判例の読み方と参考になる別判例,資料の紹介があるので,ひとつの事例からさらに類似事例などを調べるときの端緒にも利用できる。この種の記事を定期収録する雑誌として,『判例タイムズ』(判例タイムズ社),『判例時報』(判例時報社)のほか,『金融法務事情』(きんざい),『金融・商事判例』(経済法令研究会),『銀行法務21』(経済法令研究会),『労働判例』(産労総合研究所),『判例地方自治』(ぎょうせい)等がある。これら判例専門誌をDB化した製品に「判例秘書」(LIC)があり,記事本文も収録している。

囲み記事・解説コラムは,判例を読み慣れない者にとって,助けになることも多く,判例そのものを読む前にこれらを読むことが理解のうえで効率のよい場合がある。

囲み記事・解説コラムを探すには,有料判例DBで判例の出典に以上の雑誌名がないかを調べ,実際に各判例にあたりながら記事の有無を確認することとなる。いずれの製品にも「判例タイムズ」が収録されており,これら記事も収録されていて,判例と併せて読むことが可能である。

2.3 最高裁判所裁判官の意見

最高裁判所判例については,裁判所法第11条により「裁判書には,各裁判官の意見を表示しなければならない。」と規定されている。意見5)は,各裁判官の氏名のもと,理由の末尾部分で知ることができる。少数意見がやがて多数意見になる場合もあり,その後の判断を考えるうえで興味深い部分とみることができる。

3. 弁護士

弁護士の資格や仕事については,日本弁護士連合会サイトに解説がある。

  • •   日本弁護士連合会サイト http://www.nichibenren.or.jp/

3.1 弁護士等訴訟代理人と担当事件

弁護士は,訴訟において,当事者の相談にのり法的解決にあたるが,裁判所が発行する判例集上には,冒頭に当事者名が記され,それに並んで民事事件では訴訟代理人,刑事事件では弁護人として弁護士氏名が記される。なお,訴訟代理権は,簡易裁判所における訴訟では弁護士のほか,司法書士(司法書士法3条1項6号・2項),裁判所の許可を受けた第三者(民事訴訟法54条1項但書)にも認められている。また,知的財産権に関する特定侵害訴訟においては,弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限り,特定侵害訴訟代理業務試験に合格し,その旨の付記を受けた弁理士にも認められている(弁理士法6条の2)。これら訴訟代理人,弁護人を含む当事者名は,判例専門雑誌や判例DBにおいては,裁判所発行資料と同様にはみられず,ことに刑事事件では当事者名,弁護人名が仮名処理されたり割愛されることが大半である。一方,民事事件であるならば,弁護士等の氏名から多くの担当事件を検索することができる。なお,司法書士,弁理士のほかに,訴訟代理権はないが一定の法律分野に限定された業務権限を有する専門職としては,行政書士という職種もある。各職の資格や仕事についての詳細は,それぞれの連合会等のWebサイトを参照されたい。

  • •   日本司法書士会連合会 http://www.shiho-shoshi.or.jp/
  • •   日本行政書士会連合会 http://www.gyosei.or.jp/service/
  • •   日本弁理士会 http://www.jpaa.or.jp/

3.2 弁護士,司法書士,行政書士,弁理士の検索

弁護士がその業務を行うには,各地にある弁護士会とその連合体である日本弁護士連合会に登録しなければならないとされている。そこで,日本弁護士連合会Webサイト内で弁護士情報検索,弁護士法人情報検索ができる。

  • •   弁護士情報検索 http://www.nichibenren.or.jp/bar_search/
  • •   法人情報検索 http://www.nichibenren.or.jp/houjin_search/index.cgi

このほか,印刷体の資料とWebサイトは以下の通りである。

『日本弁護士連合会会員名簿』年刊(日弁連)非売品

『全国弁護士大観』第14版,2012年(法律新聞社)

『ビジネス弁護士大全2011』2010年(日経BP社)

  • •   司法書士検索・司法書士法人検索(日本司法書士会連合会) http://search.shiho-shoshi.or.jp/
  • •   行政書士検索(日本行政書士会連合会) https://www.gyosei.or.jp/members/search/
  • •   弁理士ナビ(日本弁理士会) http://www.benrishi-navi.com/

3.3 弁護士の執筆物:研究書

弁護士個人名やその所属法人名で著すもののほか,弁護士会名によるものがある。弁護士の地域弁護士会への登録についてはすでに記したが,弁護士会は各都道府県に最低ひとつはあり,詳細は日本弁護士連合会サイト「全国の弁護士会・弁護士会連合会」(http://www.nichibenren.or.jp/legal_apprentice/bengoshikai.html)にみられ,各名称や所在がわかる。こうした弁護士会では,活動のひとつとして研究会・研修会を設けている例があり,弁護士会名で出版される報告資料が散見される。研究書とはいえ,実務に即している点に特徴がある。

3.4 弁護士,司法書士,行政書士,弁理士の執筆物:実務書

実際の法的用務に役立つことをねらい著されるジャンルの書籍を実務書とよぶことが多い。弁護士ばかりでなく司法書士,行政書士,弁理士が著す実務書が数多くある。これらには,さまざまなレベルのものがあり,一般市民を対象とするものから,法務のプロ向けと思われるものまで幅がある。実務書の選択の余地がある場合には,対象となる事例を数多く手がけている職にある執筆者のものを選択するのも勧められる。

3.5 実務書等の入手先

研究書や実務書などの資料は,amazon.comをはじめとして一般書店の在庫検索Webサイトで調べ入手ができるが,特に研究書のなかには弁護士会自身が出版するケースがあり,一般の書店では入手しづらいものがある。一方,この分野の資料を専門に扱う書店のDBではその種の資料を発見できる場合がある。試しに,以下のWebサイトの著者名入力ボックスに「弁護士会」といれ結果をみるとさまざまな弁護士会の,入手可能な研究書等を知ることができる。

  • •   弁護士会館ブックセンター http://www.b-books.co.jp/東京都千代田区霞が関1-1-3弁護士会館地下1階
  • •   至誠堂書店 http://www.shiseido-shoten.co.jp/東京都千代田区霞が関1-1-4東京高等裁判所地下1階
  • •   成文堂法律専門インターネット書店 http://www.seibundoh.co.jp/shoten/

法律専門といえる書店は多くはない。法分野の専門書等で得難い資料があれば,これら書店に相談するのも方法であろう。

なお法の分野では,法令の改正や判例の変更,新判例の追加を契機として資料が改版されることがある。そのため,より新しい発行,新しい版の存在を確認,選択することは必須であり,変化に対応しているかに注意を払いたい。

4. 研究者

法分野の書き手の多数を占めるのが大学や研究諸機関に所属する研究者である。

法分野にとどまらず,研究者の検索ができる無料公開Webサイトとして科学技術振興機構(JST)の「ReaD & Researchmap」(R & R)(http://researchmap.jp/)がある。22万件におよぶ日本の研究者情報をデータベース化した研究者総覧である。同Webサイトの「研究者検索」に進むと,「研究者氏名」や「研究キーワード」などから検索ができ,研究者のプロフィールや業績などさまざまな情報を閲覧できる。

また,同じくJSTの提供する「J-GLOBAL」(http://jglobal.jst.go.jp)は「つながる,ひろがる,ひらめく」をコンセプトに,これまで個別に存在していた知識をつなぎ,発想を支援するサービスである。「J-GLOBAL」の研究者情報には上記「R&R」の情報が取り込まれており,「研究者」タブ内で,研究者氏名を入力すると,「R&R」で得られる情報に加えて,その研究者の研究内容に近い研究者一覧,研究内容に近い文献一覧,研究課題一覧が示される。

さらに国立情報学研究所(NII)が作成している「KAKEN(科学研究費助成事業)データベース」(https://kaken.nii.ac.jp)が挙げられる。科学研究費とは,日本学術振興会が「学術研究」を発展させる目的で,申請者の業績等を審査し,独創的・先駆的な研究に対し与える「競争的研究資金」である。研究課題と研究者名の両方で調べられる。研究の採択課題,助成による研究成果の概要,成果報告書および自己評価報告書を収録している。

執筆物の検索には,国立国会図書館の「NDL-OPAC」の「雑誌記事索引」の利用が考えられるが,当索引を包括するCiNii Articles(NII)(http://ci.nii.ac.jp/)の利用を勧めたい。デジタル化された論文本文が,大学,研究所の成果を集積し公開している各機関のリポジトリに収録されていれば,それらとのリンク付けがなされ当DB上で論文の入手までが可能である。

5. 図書館

リーガル・リサーチに活用できる図書館(室)を以下に紹介をする。

5.1 法律専門図書館

法律専門図書館として,国立国会図書館,その支部図書館として最高裁判所図書館,法務図書館がある。国会図書館には,専門資料室として,「議会官庁資料室」(http://www.ndl.go.jp/jp/service/tokyo/parliamentary/index.html)がある。当室は,国内外の議会会議録・議事資料,国内外の官公報,法令集,判例集,条約集,国内外の官庁の刊行資料目録・要覧・年次報告,統計資料類,政府間国際機関刊行資料,法律・政治分野の参考図書類を収集している。18歳以上であれば,利用資格を問われることはなく入室でき,レファレンスサービスが受けられる。一方,最高裁判所図書館,法務図書館は,その専門性の高さから,外部の者に対しては,利用目的(たとえば,当館にのみ所蔵が限られるなど)に応じた利用申込制をとっている。詳しくは最高裁判所図書館,法務図書館のWebサイトを確認することが望ましい。

5.2 法学部のある大学図書館

法学に関する学部をもつ大学の図書館の利用が考えられる。所蔵の大半は,国内,海外の学術書である。貸出や有料DB利用に制限はあるものの一般公開をしている場合がある。

5.3 都道府県立図書館

基本的な法分野の資料収集が行われ,大学図書館ではみることの少ない実務書を収集している。Webサイトでは,当該自治体内の図書館や,利用を公開している大学等所蔵資料の横断検索が行える場合もある。また,法分野の有料DBの利用ができることもあり,導入しているものの確認ができる。東京都立中央図書館,神奈川県立図書館,横浜市立図書館,大阪府立中之島図書館などは,ビジネス支援等の延長から法分野のレファレンスサービスを積極的に行っていることが知られている。

5.4 地方公共団体の議会図書室

都道府県と市町村の議会図書室は,地方自治法第100条第19項において「議会は,議員の調査研究に資するため,図書室を附置し前二項の規定により送付を受けた官報,公報及び刊行物を保管して置かなければならない。」とされており,18項において「都道府県は,当該都道府県の区域内の市町村の議会及び他の都道府県の議会に,公報及び適当と認める刊行物を送付しなければならない。」とされている。図書館の公開等状況は,それを担当する専任職員の有無等で異なるであろうが,その利用の詳細を確かめることを勧める。インターネットで,地名と「議会図書」などをキーワードに検索するとよい。基本的な法令集,判例集,国会と当都道府県,当区域内市町村の議会議事録や例規集の所蔵が考えられる注2)

なお,議会図書室ではないが,これと関連して都市問題,自治問題等で注目されている図書館があるので,以下に紹介する。各Webサイトからは各OPACにもアクセスできる。

  • •   公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所市政専門図書館(旧:財団法人東京市政調査会) http://www.timr.or.jp/library/
  • •   公益財団法人特別区協議会 特別区自治情報・交流センター http://www.research.tokyo-23city.or.jp/

5.5 業界団体の図書館

業種ごとの協会等機関が設立する図書館がある。各業に関係する資料を所蔵しているのだが,各業協会の出版物も含まれ,その業種を規制する通達・通知集などがみられる場合がある。たとえば,金融関係業界をみても以下にあげる図書館がありOPAC,直接利用が一般に公開されているのでこれらの利用を勧める。

  • •   銀行図書館(全国銀行協会) http://www.zenginkyo.or.jp/library/
  • •   証券図書館(日本証券経済研究所) http://www.jsri.or.jp/web/library/tokyo/index.html
  • •   損害保険事業総合研究所 図書室 http://www.sonposoken.or.jp/library
  • •   生命保険協会 http://www.seiho.or.jp/
  • •   生命保険文化センター http://www.jili.or.jp/index.html

5.6 図書館のガイド情報

以上,図書館の紹介をしたが,専門図書館のガイドとしては『専門情報機関総覧2012』6)がある。各図書館のWebサイトとともに活用されたい。

6. おわりに

連載では12回にわたり国内法のリサーチ入門をお届けしてきたが,研究・実務にいくらかでも役立てていただければと願う。次回から,海外のリーガル・リサーチ入門をお届けする予定である。

本文の注
注1)  次の資料も参考にされたい。いしかわまりこほか. “第Ⅳ部 文献を調べる 1.4人物を調べる”. リーガル・リサーチ. 第4版, 日本評論社, 2012, p. 261-270.

注2)  各地方公共団体の行政関係資料については,次も参照されたい。中網栄美子. 研究・実務に役立つ!リーガル・リサーチ入門 第10回 行政情報 3.2 行政資料センター・文書館. 情報管理. 2013, vol. 56, no. 4, p. 239-240.

参考文献
  • 1)   村井 のり子. 研究・実務に役立つ!リーガル・リサーチ入門 第4回 法令の解説 3.4 立法担当者の解説記事を読む. 情報管理. 2012, vol. 55, no. 10, p. 756-757.
  • 2)   村井 のり子. 研究・実務に役立つ!リーガル・リサーチ入門 第4回 法令の解説 3.5 逐条解説書(コンメンタール)を利用する. 情報管理. 2012, vol. 55, no. 10, p. 757-758.
  • 3)   金澤 敬子. 研究・実務に役立つ!リーガル・リサーチ入門 第8回 判例評釈を探す 3.1『最高裁判所判例解説』民事編,刑事編(法曹会). 情報管理. 2013, vol. 56, no. 2, p. 103.
  • 4)   いしかわ まりこほか. “第Ⅳ部 文献を調べる”. リーガル・リサーチ. 第4版, 日本評論社, 2012, p. 241-377.
  • 5)   藤井 康子. 研究・実務に役立つ!リーガル・リサーチ入門第6回 判例とは 本文の注 注12). 情報管理. 2013, vol. 55, no. 12, p. 916.
  • 6)  専門図書館協議会調査分析委員会編. 専門情報機関総覧2012. 専門図書館協議会, 2012, 770p.
 
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