情報管理
Online ISSN : 1347-1597
Print ISSN : 0021-7298
ISSN-L : 0021-7298
リレーエッセー
つながれインフォプロ 第4回
藤原 直幸
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2014 年 56 巻 10 号 p. 716-718

詳細

京都情報図書館学学習会について

京都情報図書館学学習会(以下,学習会)は主に京都府内で活躍する図書館職員等による自主的な学習会である。

学習会の発足は1993年で,今年(2013年)で21年目になる。勤務後の1時間半程度を使い,京都府立医科大学附属図書館を主な会場とし,おおむね月1回の割合で,これまでに209回を開催した(2013年10月現在)。参加者は毎回10人前後であり,年齢層は学生から退職した方までと幅広い。発足の動機は,発起人が当時所属していた医学図書館では,医学系の図書館との勉強会はあったが,同じ府立の5つの図書館(府立図書館,府立総合資料館,府立大学附属図書館,府立医科大学附属図書館,府議会図書室)との交流が少なかったため,勉強会を立ち上げたとのことである注1)

図1 学習会ホームページ URL: http://kyotolibrarian.web.fc2.com/

まず,学習会の記録や概要についてはホームページ(以下,HP)(http://kyotolibrarian.web.fc2.com/)に掲載があるので,そちらを見てもらいたい。

ここではHPに記載していない会の特徴を紹介したい。1つ目は誰でも自由に参加できることである。学習会では,参加条件は一切設けていない。また事前の参加申請や連絡も必要なく,HPで公開された予定を見て,関心のある回に参加すればよいという方法をとっている。これは参加へのハードルを下げる要因になっている。

2つ目は参加者や世話人がいなくなった場合は発展的に解散すると概要に明示していることである。発足当時から世話人は若手職員を中心に入れ替わっているが,継続を義務付けていないことが世話人への負担を和らげ,会を長く続けることができている理由かもしれない。

ところで,学習会の正式名称「京都情報図書館学学習会」だが,一般的な「図書館情報学」ではなく「情報図書館学」と逆になっているため,違和感を持たれた方もいるのではないだろうか。学習会発足当初は「京都図書館情報学学習会」という名称であったが,第201回学習会において,前国立国会図書館長で京都大学名誉教授の長尾真先生の講演の中で「図書館の情報を集めるのではなく,情報を図書館的にどうするのかということを考えてはどうか」というお話を受けて世話人の間で情報図書館学の方が学習会の趣旨にもあっていると考え,2013年4月より今の名称に変更した注2)

学習会での発表内容は図書館に関することなら,研究報告から基礎的な学習報告まで幅広く取り上げることができる。また見学会やイベントなども企画,実施している。

図2 学習会の風景(2013年10月16日撮影)

次に発表内容をいくつか紹介する。スキルアップにつながる内容としては,図書館関係の大会や研修の参加報告や,図書館員として知っておくと便利なIT関係の知識であるUstreamの使い方,魅力あるHPの作成方法,製本の仕方,関連資格取得の勧めなどがある。

また,MLA連携注3)とまではいかないが,図書館だけでなく,文化施設や製本工場を見学したり,博物館や文書館の関係者に発表いただいたりしている。

さらに関西地区には図書館系の勉強会がいくつかあり,共同で勉強会を開催することもある。個人的に思い入れが強いのは,2012年に京福電鉄の車両を貸し切り,車内でビブリオバトルを行ったことである注4)注5)

これまでとこれから

今後については個人的に懸念していることがある。

それは世話人の体制である。現在は5名で運営しているが,新規採用職員が減少したこともあり,新しく世話人を引き受けてくれる人がなかなか出てこないため世代交代が滞っている。これについて,筆者は,職員の業務量が増加する中で,世話人になるということの心理的・時間的負担が大きいと感じていることが原因だと考えている。しかし,実際にやってみるとそのような負担の増加よりも自分にプラスになる面が多いと感じる。筆者の場合は世話人をすることによって企画能力・発表のマネジメントの仕方が身に付き,さらに各所で活躍している図書館員や博物館,文書館の職員と知り合うことができた。最近は育児に忙しくなかなか参加できないが,さまざまな発表を聞くことで各方面にも興味が湧いてくる。また,人的ネットワークを広げるために外部の研修や勉強会に対して積極的に参加するようになり,間違いなく自分にとってプラスであったと言える。

また,毎回の企画についても頭を使っている。できるだけいろいろな人に発表してもらいたいが,世話人で探しても限りがある。筆者は学習会を他の機会での発表の練習などに気軽に利用してもらえればと思っている。発表にあたっては,自分が漠然と知っていることを整理して,理解することが必要であり自分自身のスキルアップにもつながる。また発表すると学習会に参加している意識が明確になり,発表者間の交流も生まれる。このため,発表するのを躊躇(ちゅうちょ)している人にはこの学習会を活用して「いま発表をして欲しい」と思っている。

世話人をやっていて

学習会は複数の世話人を置いて会を運営し,記録,広報,発表依頼・企画などを行っている。世話人は転勤や家庭の事情等で入れ替わりがあり,これまでに17人が担当している。

学習会の記録は,各々の世話人が分担して配布希望者には郵便やメールで配布していたが,現在はメーリングリストを使用して約100名の登録者に配信している。他に情報発信手段として2009年よりHPを開設している。HPでは学習会の今後のスケジュールや過去の記録,学習会の概要等を掲載している。過去の記録は115回以降の発表の内,公開の許諾が取れたものを掲載し,それ以前の発表についてはタイトルや発表者名を掲載している。

学習会の世話人を長く務めて感じたことは,図書館員のようなインフォプロはさまざまな知識や技能を学び続けないといけない仕事であるということだ。情報を得るためのデータベース検索の技術やIT技術の仕組みなどに精通していなければいけないし,対人業務なので,接遇の技術・おもてなしの心も必要である。また,最近はMLAだけでなく大学(University),産業界(Industry)も含めたMALUI連携も言われており,自らの業界だけでなく関連業界の現状や課題などを理解しておく必要がある。

そのためには各地で行われている勉強会に積極的に参加するのがよいと思う。Web情報もよいが,実際に足を運んで学ぶことでさまざまな人に出会い,体験をすることでより知識が身に付くこともあるのではないだろうか。

筆者自身,この学習会の世話人をしていてよく感じるのは,図書館職員は自館だけに閉じこもっていてはいけないということである。筆者が長年勤務していた京都府立総合資料館は博物館・図書館・文書館的機能を持つ複合施設であり,日常的に行政文書や古文書の担当者と接していた。公共図書館勤務者には,知識や人間関係が図書館内にとどまっている人も多いような気がする。しかし,学習会に参加することにより,大学図書館員や学芸員,アーキビストと関わることができ,インフォプロとしての視野が広がるように感じている。今後もMALUIだけでなく,知的情報を担う人たちの間で知識の共有化・つながりが醸成され,子供たちの世代によりよい知的資産を継承していきたいと考えている。

執筆者略歴

藤原 直幸(ふじわら なおゆき)

京都府に司書として採用された後,京都府立総合資料館に勤務。現在は国立国会図書館関西館に出向中。2児の父親としてイクメン図書館員を目指し,仕事と育児の両立に奮闘中。

本文の注
注1)  “学習会記録(第200回)”. 京都情報図書館学学習会記録. http://kyotolibrarian.web.fc2.com/kiroku/kiroku200.html, (accessed 2013-11-07).

注2)  “KU・京図情合同学習会「『未来の図書館を作るとは』長尾真先生と語る」”. Togetter. http://togetter.com/li/447740, (accessed 2013-11-07).

注3)  ミュージアム(Museum)・図書館(Library)・文書館(Archives)の連携のこと。それぞれの頭文字をとってMLAと呼ばれる。いずれも文化的情報資源を収集・蓄積・提供する公共機関であるという共通点を持ち,情報資源のアーカイブ化等の課題を共有していることから,近年連携の重要性が認識されてきている(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/toushin/attach/1301655.htm「用語解説:文部科学省」)。

注4)  “知的書評合戦ビブリオバトル公式サイト”. http://www.bibliobattle.jp/, (accessed 2013-11-07).

注5)  “学習会記録(第191回)”. 京都情報図書館学学習会記録. http://kyotolibrarian.web.fc2.com/kiroku/kiroku191.html, (accessed 2013-11-07).

 
© 2014 Japan Science and Technology Agency
feedback
Top