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RDA入門 目録規則の新たな展開 JLA図書館実践シリーズ23
南山 泰之
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2014 年 57 巻 2 号 p. 143

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  • RDA入門 目録規則の新たな展開 JLA図書館実践シリーズ23
  • 上田修一,蟹瀬智弘●著
  • 日本図書館協会,2014年,B6判,205p.,1,944円(税込)
  • ISBN 978-4-8204-1319-6

本書は,AACR2(英米目録規則第2版)に代わる新たな規則RDA(Resource Description and Access)に関する初の日本語による解説書であり,幅広く目録に関心のある人々にとって役立つ待望の一冊である。

本書の構成は,目録の歴史とRDAができるまでの経緯を簡潔にまとめた「第Ⅰ部 FRBRまで:目録規則の変遷と現状」,RDA制定の背景にあるFRBR(*1)とRDAの特徴,そしてRDAが日本に及ぼす影響を述べた「第Ⅱ部 FRBRとRDA」,RDA本則をカタロガーの視点から解説した「第Ⅲ部 RDAの詳細」の3部構成である。以下,各部の内容を俯瞰し,併せてその魅力をお伝えしたい。

第Ⅰ部では,前半部分で目録規則の変遷を概観し,後半部分では「目録を構成する概念とその変化」という切り口から,RDA制定までの経緯を振り返っている。RDAの基盤は100年以上昔に制定されたパニッツィやカッターの目録原則までさかのぼるにもかかわらず,RDAはFRBRに基づいた規則であると同時に,「これまでの目録規則の変化の流れの中にある」(本文より)ことを確認できるが,「目録規則は,目録の媒体によって左右されてきた」という著者(上田氏)による歴史への評価は非常に印象深い。RDAがこの評価を克服できるかという疑問への答えは,4章「RDAの背景」を導入として,第Ⅱ部に委ねられる。

第Ⅱ部では,第Ⅰ部を受けてFRBRとRDAを概説している。冒頭でRDAの特徴を簡潔に述べているが,「RDAは何がしたいのか」を考えるうえで大変重要なポイントである。AACR2との比較から,目録の対象が「図書館」から「情報資源」へ,そして「規則」から「指針」へと転換された点が明らかにされているが,実はこの「目録の目的の転換」が,第Ⅰ部で提示された疑問へのRDAによる解答となることに気付かれる方も多いだろう。なお,「RDAが疑問に答えきれているか」との新たな疑問は,ぜひ有志で討議されたい。続いて,FRBRが定義する実体の3グループやRDAの構成について詳細な説明がなされている。ここでは,RDAを使うための概念モデルが示されるが,「概念モデル」というとらえ方はなじみがなく,抽象的でわかりにくいという感想をおもちの方々もおられるだろう。しかし,著者(蟹瀬氏)も述べるように,「RDAを使うためにはどうしてもこの概念モデルを理解する必要がある」。読者の理解を助けるため,著者は「概念モデル」につき豊富な具体例や図を使い,十分に理解できるよう丁寧に説明している。特に前述のような感想をおもちの方々には,一読の価値があるだろう。後半部分では,RDAが日本に及ぼす影響についても触れている。

第Ⅲ部では,RDA本則のうちAACR2から変わった点に焦点をあて,詳細に解説している。これまでAACR2に親しんできた目録担当者に対する,RDAへのよき橋渡しとなるだろう。RDAの解説を通して,著者(蟹瀬氏)のAACR2への深い造詣(愛情?)をも感じ取れるところが味わい深い。

RDAは次世代の目録の基盤となることに疑いがないものの,特に日中韓資料への適用にはまだまだ課題が残っている。本書を好機として,実務者・研究者を問わず,国内でのRDAに関する議論が広く活発化することを期待したい。

  • (*1)FRBR(Functional Requirements for Bibliographic Records):書誌レコードの機能要件

(国立極地研究所情報図書室 南山泰之)

 
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