日本細菌学雑誌
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平成26年黒屋奨学賞受賞論文
ピロリ菌の感染戦略と胃がん発症に関わる宿主応答機構の解析
津川 仁
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2014 年 69 巻 4 号 p. 565-575

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抄録

Helicobacter pylori の持続的な感染が, H. pylori 起因性疾患の惹起に強く関与する。そこで, 本研究では, 持続感染を樹立させるH. pylori の感染戦略について, 1)coccoid form の性状, 2)薬剤耐性化機構, 3)宿主の異物排除応答抵抗性機構の3 点に注目した。その結果, coccoid form のKrebs cycle では, alphaketoglutarate oxidoreductase 依存的に, alpha-ketoglutarate をダイレクトにsuccinate へと変換することで生命維持を図っていること, H. pylori のSodB の過剰発現を誘導する転写制御因子Ferric uptake regulator のアミノ酸変異がメトロニダゾール耐性を与えること, 鉄トランスポーターFecA1 によるSodB への活性中心Fe2+ の供給が持続感染の樹立に関わることを明らかとした。また, 宿主細胞内へ装填されたCagA は, 通常, autophagy により分解されるが, CD44v9発現がん幹細胞では, CagA 分解性autophagy の発現抵抗性を示し, CagA を蓄積させることを明らかとした。

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© 2014 日本細菌学会
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