知能と情報
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原著論文
ヒューリスティックルールを用いたインクドロップスプレッド法の研究
尾崎 新斗本多 中二内海 彰
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2013 年 25 巻 5 号 p. 865-879

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抄録

インクドロップスプレッド(IDS)法は,ソフトコンピューティングの概念に基づき提案されたモデリング手法の1つである.IDS法では多入力1出力のモデリング対象システムを複数の1入力1出力システムに分割し,対象システムの入出力データを,分割した複数の1入力1出力システム毎に2次元平面にプロットし,イメージ情報を作成している.データをプロットする際にはインクを水面に落とす様に,データの中心を濃く,中心から離れるほど薄くプロットしている.またインクが重なる部分はより濃くすることで,一筋の経路や広がりといった特性が浮かび上がる.こうして作成された複数のイメージ情報から特徴の抽出を行い,抽出された特徴をファジィ推論を用いて組み合わせることによって対象システムのモデリングを行っている.IDS法では対象システムを分割する際に対象システムの各入力毎に分割し,さらに各入力の入力次元を分割して場合分けを行っている.IDS法の性能を向上させるためにこの入力次元の分割は重要であり,分割数,分割位置といった分割の仕方を探索するいくつかの手法が提案されている.しかし既存の手法では分割の仕方を一度には決定できず,計算時間が多く必要となる等の問題があった.そこで本論文では,IDS法が作成するイメージ情報から分割を高速に決定する手法を提案している.提案手法ではまず入力次元を分割せずに作成したイメージ情報から,分割を決定するために有効な情報を抽出,分割を決定し,さらに決定した分割を用いて作成したイメージ情報から情報を抽出し,分割を調整する手法を提案している.本論文では提案手法の有効性を示すため,既存手法として等分割手法とGAを用いた手法との比較を行っている.この手法を用いることにより既存手法と比較して,作成されるイメージ情報を減らし,精度の良い分割を高速に探索することが可能となることを示している.またIDS法以外の手法としてFeed forward Neural Network やSupport Vector Machine との比較を行い,変化の多い関数近似や,二値分類問題に対しても提案手法を用いたIDS法が有効であることを示している.

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© 2013 日本知能情報ファジィ学会
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