化学と生物
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解説
「真の」二機能性酵素の発見とその「変身」のメカニズム
古細菌型フルクトース-1,6-ビスリン酸アルドラーゼ/ホスファターゼ
伏信 進矢西増 弘志若木 高善
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2012 年 50 巻 12 号 p. 868-875

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抄録

酵素のなかには二機能性 (bifunctional) 酵素と呼ばれるものがあるが,それらは通常,基質特異性の低い酵素や複数の活性部位をもつ複数ドメインからなる酵素であり,原則として1つの酵素は1つの反応を触媒すると信じられてきた.しかし近年,この常識を覆す酵素が発見された.古細菌や好熱性細菌の糖新生経路で働く酵素フルクトース-1,6-ビスリン酸アルドラーゼ/ホスファターゼは1つの活性部位が「変身 (metamorphosis)」して2つの全く異なる化学反応を触媒することが明らかになった.ここでは,この不思議な酵素が発見された経緯から,結晶構造解析で解明されたメカニズム,その生物的意義および進化的な位置づけ,そのほかの二機能性酵素の例について,概説する.

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© 2012 by Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
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