産業衛生学雑誌
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原著
日本語版Mentoring Functions Questionnaire 9項目版(MFQ-9)の信頼性・妥当性の検討
榊原(関) 圭子 石川 ひろの木内 貴弘
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電子付録

2013 年 55 巻 4 号 p. 125-134

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抄録

目的:メンタリングとは,知識や経験の豊かな者(メンター)が,未熟な者(メンティ)に対し,キャリアや心理社会面での発達を目的に継続して行う支援行動であると定義される.欧米の実証研究では,メンターからの支援が多いほど,メンティはキャリアにより成功し,精神健康が良好で,仕事と仕事以外の生活間での葛藤が少ないことが報告されている.本研究では,欧米の研究で頻繁に用いられているメンタリング尺度であるMentoring Function Questionnaire 9項目版(MFQ-9, Castro et al, 2004)の日本語版を作成し,信頼性および妥当性の検討を目的とした.対象と方法:2012年1月に,インターネットリサーチ会社のモニター登録者のうち民間の事業会社に勤務する男女を対象にWEB調査を行い,メンターを有する357名を分析対象とした.調査項目は,個人属性の他,日本語版MFQ-9,職務満足感,組織コミットメントなどであった.結果:内的整合性は,日本語版MFQ-9全体,下位尺度ごとの合計値ともα係数は0.7以上を示した.因子妥当性では,想定した通り,キャリア支援,心理社会的支援,ロールモデル的支援の3因子が抽出された.確証的因子分析では,GFI=0.96,AGFI=0.94,CFI=0.92,RMSEA=0.05と良好な適合度を得た.併存妥当性については,日本語版MFQ-9全体と職務満足感(r=0.20, p<0.01),組織コミットメント(r=0.17, p<0.01)との関連性が示された.下位尺度については,キャリア的支援,心理社会的支援,ロールモデル的支援と職務満足感とで正の相関が示され(順に,r=0.14, 0.14, 0.15, いずれもp<0.01),キャリア的支援,ロールモデル的支援と組織コミットメントとの間では正の相関が見られた(順にr=0.17, 0.14, いずれもp<0.01).心理社会的支援と組織コミットメントの間には相関が示されなかった.結論:併存妥当性の検討で,心理社会的支援と組織コミットメントに相関が見られなかったことなど検討課題は残されたが,日本語版MFQ-9の一定の信頼性・妥当性を示すことができた.

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© 2013 公益社団法人 日本産業衛生学会
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