1979 年 33 巻 3 号 p. 180-183
海水中の微量モリプデンを溶媒抽出した後原子吸光分析した.モリブデンは, 4-ベンゾイル-3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾロン (BMPP) と錯体を形成しこれはインアミルアルコールに抽出できる, そこでモリブデンを抽出する際の最適条件を得るためpHの影響や試薬の濃度の影響, および各種共存元素の影響について検討した.その結果, モリブデンはpH1.0~3.0で完全に抽出されることがわかった. また, 共存元素の影響について検討した結果, Na, K, Sr, Ca, Mgなどは共存量が多くても影響しないが, Fe (III), Cr (VI), V (V) などは2mg以上で大きな負の影響を与える.このことは, これらの元素がBMPPと錯体を形成するため共存量が増加するとBMPP濃度が減少するためと思われる.
分析操作を次に述べる.塩酸10mlを添加した海水1lを加熱濃縮し200mlとした後No.3の濾紙で濾過する. 次に酢酸ナトリウムを加えpH2.5に調整した後, 分液ロートに入れる. これに0.2w/v%のBMPP-インアミルアルコール溶液10mlを加え10分間振り混ぜモリブデンを抽出した. その結果海水1lには7~11μgのモリブデンが含まれており, これは, これまでの報告値とよく一致している.