Anthropological Science (Japanese Series)
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原著論文
オホーツク文化期人の大腿骨における計測的特徴
松村 博文Hudson Mark J.川村 健太郎柏 孝史
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2010 年 118 巻 2 号 p. 69-82

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抄録

北海道北部と東部のオホーツク文化期人の大腿骨計測値について,地域差を明らかにするとともに,同じ北海道内の縄文・続縄文人やアイヌとの比較もおこない,オホーツク人の集団的特性も明らかにした。また判別分析を用いることにより,これらの北海道内の集団がどの程度の正答率で帰属集団を判別できるかも検証した。モヨロ貝塚をはじめとする道東のオホーツク人については,大腿骨の全長や骨体上部径および頭頚部の大きさなどが顕著に異なり,道東オホーツク人はこれらに関する多くの項目で有意に大きいことが示された。一方,大岬や浜中遺跡などからなる道北オホーツク人は,全長や骨体径において道東オホーツク人よりも小さく,縄文・続縄文人やアイヌとは大きな差はみいだされなかった。オホーツク人の大腿骨の形態におけるこうした顕著な地域差は,従来の頭蓋形態の比較ではみられなかったものである。またこれら4集団の男性の大腿骨計測値を用いて判別分析をおこなったところ,道北,道東のいずれのオホーツク人も他の2集団とは90%以上の正答率で判別が可能であり,大腿骨全体の大きさだけでなく,骨体長に対する各部位の径などのプロポーションの相違も判別に寄与していることが明らかとなった。

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© 2010 日本人類学会
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