分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
陽・陰イオン交換樹脂層別充填カラム分離/誘導結合プラズマ質量分析法による高純度鉄中微量元素の定量
藤本 京子志村 眞
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2001 年 50 巻 3 号 p. 175-182

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抄録

陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を1本のカラムに層別に充填し, HF系でイオン交換を行うことによって, Mn, Co, Ni, Cu, Nb, Mo, W, Pb等20数元素を鉄マトリックスから簡便に分離・濃縮する方法を確立した. 本法では, 従来溶媒抽出やイオン交換分離など複数の前処理法によっていた試料調製を単一の方法としたことにより, 試料調製時間が大幅に短縮された. 更に, 従来の溶媒抽出操作のような人手の関与する操作が減少したことによって, 空試験値の低減, すなわち定量下限の向上が図られ, 迅速な高感度分析法のための前処理法として有用であることが確認できた. この方法でFeとの分離が困難なAl, V, Se, Beは, イオン交換後の溶出液をHCl酸性にして陰イオン交換することにより, 鉄マトリックスから濃縮分離できた. 本法により調製した溶液をICP-MSで定量した際の定量下限は, 汚染の影響を受けやすいAl, Ni, Zn以外はすべて0.1μg/g以下で, 認証標準物質 (高純度鉄) 中不純物の分析に適用したところ, 高純度鋼中μg/gレベル以下の極微量元素が簡便に, 高精度に定量できた.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2001
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