分析化学
Print ISSN : 0525-1931
総合論文
日本分析化学会における標準物質の開発
保母 敏行飯田 芳男石橋 耀一岡本 研作川瀬 晃中村 利廣中村 洋平井 昭司松田 りえ子山崎 慎一四方田 千佳子小野 昭紘柿田 和俊坂田 衞滝本 憲一
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 57 巻 6 号 p. 363-392

詳細
抄録

(社)日本分析化学会は1993年にU,Thの含有率を認証した二酸化ケイ素標準物質を開発して以来,燃焼灰,土壌,底質,河川水,排水,プラスチックス,工業材料,食品と多岐にわたる種類の標準物質の開発を続けており,現在頒布中の標準物質は23種類に上る.認証対象は特定成分の含有率で,成分はダイオキシン類,金属元素など環境分析で扱われるものが多いが,食品では栄養成分を対象とした.本会の標準物質の大きな特徴は純物質あるいはその溶液ではなく,上述のように,環境試料あるいは工業製品であること,つまり一般分析者が実際に扱う試料の形態であることである.認証値の決定方法は,まず均質性の保証された試料の調製と,多数の試験機関の参加による分析共同実験,そして得られた報告値をロバスト法を導入した統計手法で処理して評価し,信頼性ある認証値を得る,という手法によっている.また,これらの標準物質の開発時において,例えばダイオキシン類のガスクロマトグラフ分離の状況,PCBの抽出条件と塩素置換数の変化など,貴重な知見が得られたことは分析手法改善につながる収穫といえる.

著者関連情報
© The Japan Society for Analytical Chemistry 2008
次の記事
feedback
Top