日本畜産学会報
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一般論文
泌乳牛第一胃内容物の物理的性状の指標としての貫入抵抗値の評価
泉 賢一坂本 孝仁柴山 草太辻 秀雄
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2008 年 79 巻 3 号 p. 361-368

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抄録

第一胃内の堅さと深さを測定するために第一胃内貫入抵抗測定装置を開発した.その装置を用いて切断長の異なる混合飼料を自由採食させた第一胃カニューレ装着泌乳牛4頭における第一胃内容物の貫入抵抗値(PRV)を調査し,第一胃内容物粒度分布や咀嚼活動との関連について検討した.通常の混合飼料(TMR)を給与した対照区と通常TMRをさらに2度切断した細断区の2処理を設けた.PRVを経時的に測定し,給与直前(0 h)と給与2時間後に第一胃内容物の全量採取を実施した.採食量に処理間差はなく,採食期の採食速度が細断区で速かった(P < 0.05)ことを除き採食行動あるいは反芻活動に処理による差はなかった.第一胃内容物のPRVおよび深さの平均値は両区とも12 Nおよび53 cmであった.第一胃上部に明瞭なマット層が存在する割合は対照区よりも細断区の方が高く,その厚さは対照区(31.4 cm)よりも細断区(37.0 cm)が上回る傾向にあった(P < 0.10).0 hの第一胃内原物量が対照区よりも細断区で多い傾向(P < 0.10)にあったことを除き,内容物量および粒度分布に処理間差はなかった.本装置を用いることにより第一胃内容物の堅さやマット層を把握することが可能となり,第一胃内の物理的性状を評価する新たな指標としてPRVは有効であると考えられた.

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© 2008 公益社団法人 日本畜産学会
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