2009 年 49 巻 6 号 p. 348-353
症例は48歳男性である.急速に進行した左片麻痺より初診時脳梗塞がうたがわれたが,MRI FLAIR画像で血管支配領域と一致しない広範な高信号域,血液・髄液検査のTPHA陽性所見から神経梅毒と診断した.駆梅療法で改善せず,入院7カ月後死亡した.病理学的には,画像に一致する領域に慢性髄膜脳炎像を示し,神経細胞の萎縮脱落とアストロサイト,桿状ミクログリアの増生をみとめたが,血管炎や脳梗塞の所見はなかった.実質型神経梅毒のうち,急速に巣症状を呈し臨床症状に対応する局在病巣を示すLissauer型進行麻痺と考えられた.脳梗塞と鑑別上問題となりえ,またMRI画像と病理所見で病変部位の一致を確認した貴重な症例と考え報告する.