2010 年 50 巻 6 号 p. 409-411
症例は,慢性腎不全で3年間血液透析をうけている75歳男性である.アルコール多飲はない.ビタミンをふくまない糖質液の点滴後,急速な歩行障害と意識障害を呈した.脳MRIや脳脊髄液に異常が無かったものの,病歴と症候からウェルニッケ脳症がうたがわれたため,直ちにビタミンB1(VB1)の投与を開始し,症候はすみやかに改善した.後に血中VB1の著明な低値が判明し,ウェルニッケ脳症の診断が確定した.血液透析患者や高齢者では,画像所見が正常であっても非アルコール性ウェルニッケ脳症の可能性があることを十分に認識し,些かでも本症がうたがわれた際は,VB1の検査結果を待つことなくすみやかにVB1投与を開始すべきである.