日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
III群抗不整脈薬塩酸ニフェカラント(シンビット®注)の薬理作用および臨床効果
小谷部 明広佐野 秀年
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2002 年 119 巻 2 号 p. 103-109

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抄録

ニフェカラント(シンビット®,MS-551)は純粋なIII群抗不整脈薬であり,III群薬としては本邦初の注射剤として1999年6月に製造承認を受けた.本剤は心筋細胞膜のK+電流のうち主としてIKrを抑制することにより活動電位持続時間を延長し,有効不応期を延長させることで抗不整脈作用を示す.本剤の治療上の意義は致死性の心室性不整脈である心室頻拍,心室細動からの救命にある.ニフェカラントはその作用機序に基づきリエントリーが関与する心室頻拍および心室細動に対して効果を示し,既存の抗不整脈薬の様に心機能を抑制することはなかった.臨床的にも治験の成績を初めとする使用経験から有効であることが示された.特に既存の抗不整脈薬が無効な症例または低心機能により既存の抗不整脈薬の使用が制限される症例に対して高い効果を示し,心機能を悪化させた例はなかった.重篤な副作用は全て過度のQT時間の延長に基づく催不整脈作用(TdP: torsades de pointes,心室頻拍等)であり使用にあたっては注意を要するが,本剤は従来ならば治療不可能であった患者を救命できる可能性を持つ薬剤として期待されている.

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© 2002 公益社団法人 日本薬理学会
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