日本薬理学雑誌
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ミニ総説号「下部尿路機能研究の最近の進歩:基礎研究を臨床応用に繋ぐ」
排尿反射機構に関する新しい考え
吉村 直樹
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2003 年 121 巻 5 号 p. 290-298

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抄録

膀胱と尿道からなる下部尿路は蓄尿と尿排出の2つの相反する機能を司り,その機能は,末梢および中枢の神経路を介して複雑に制御されている.まず,蓄尿反射は,主に脊髄レベルの反射によって制御され,交感神経(下腹神経),体性神経(陰部神経)の興奮によって膀胱の弛緩と尿道の収縮が引き起こされる.そして,尿排出反射は,脊髄から脳幹の橋排尿中枢を経由する反射経路によって引き起こされ,副交感神経(骨盤神経)の興奮がアセチルコリンとATPによる膀胱収縮とnitric oxideを介する尿道弛緩を惹起し排尿が起こる.そして,これらの反射は,骨盤神経を経由する有髄Aδ求心線維および無髄C求心線維のうち,Aδ線維を介して引き起こされる.また,脊髄より上位の中枢はこれらの神経経路に対するコントロール機構として働いている.そして,Pseudorabies virusを用いた神経標識の動物実験で,脊髄から大脳皮質までの多くの部位が排尿に関連していることが示されている.また,ドパミン,セロトニン,ノルエピネフリン,GABA,グルタミン酸などの種々の伝達物質が,脊髄とその上位中枢で排尿をコントロールしている.したがって,種々の末梢,中枢の神経路の障害や疾患および薬物投与が,頻尿,尿失禁,排尿障害などの下部尿路の機能異常を引き起こす.

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© 2003 公益社団法人 日本薬理学会
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