日本薬理学雑誌
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総説特集号「薬理学のQOLへの貢献」
細胞増殖·分化·死を制御するイオンメカニズムと創薬
森 泰生稲垣 千代子久野 みゆき井上 隆司岡田 泰伸今泉 祐治
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2003 年 122 巻 3 号 p. 201-214

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抄録

イオンチャネル·トランスポーターの分子機能は神経·筋·腺細胞の興奮性を制御することだけでなく,非興奮性細胞を含むあらゆる細胞の増殖分化および細胞死のメカニズム制御にも深く関わっていることが明らかとなりつつあり,後者の制御機構における分子実体が近年,急速に明らかになってきた.本総説では細胞の増殖分化および細胞死に関連するイオン制御機構のトピックスを幾つか取り上げた.特に重要な分子実体である非選択性陽イオンチャネルとしてのTransient Receptor Potential(TRP)の機能に関する新知見を紹介した.さらにアルツハイマー病におけるβアミロイドタンパク毒性の発現に関わる中枢神経系でのClポンプ機能,破骨細胞におけるH+動態調節機構,容量感受性Clチャネルのアポトーシスにおける役割,免疫細胞増殖における幾種かのK+チャネルの役割などを解説し,これらのチャネル·トランスポーターと疾患との関連および創薬への展望をQOLの改善に関連させて論じた.

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© 2003 公益社団法人 日本薬理学会
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