日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
ミニ総説号「プロテアーゼ疾患の分子病態と治療戦略」
カルパインと病態
−構造活性相関からの考察−
反町 洋之川畑 順子
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 122 巻 1 号 p. 21-29

詳細
抄録

カルパインは様々な生物種·組織で機能する,Ca2+によって活性化される細胞内システインプロテアーゼである.哺乳類には14種類の分子種が存在し,その生理機能は未だに不明な点が多いが,筋ジストロフィーや神経変性などの病態への関与が報告されている.特に骨格筋特異的に発現するカルパイン,p94(カルパイン3とも呼ばれる)は肢帯型筋ジストロフィー2A型(LGMD2A)の責任遺伝子産物と同定されており,疾患との関連性が深く研究されている.p94は,代表的な分子種であるµ-,m-カルパインと高い相同性を示すが,特徴的な3つの挿入配列を有しており,それらによってp94の特異的な性質,すなわちCa2+非依存的な高い自己消化活性能,骨格筋構成タンパク質コネクチンへの結合などが生み出されると考えられている.LGMD2Aはp94のプロテアーゼ機能欠損が発症原因となることから,p94の特徴的な機能が骨格筋組織の維持に不可欠なことは明らかである.以上を踏まえ,既に解明されているµ-,m-カルパインの結晶構造にp94の構造を投影させることなどで,p94の機能と構造の相関を考察した.こうした考察はp94の骨格筋での役割とLGMD2A発症過程の分子機構を解析するうえで重要であり,さらに組織普遍的なカルパインの機能の解明に応用することで,カルパインが関与する病態の機構と治療法の確立に大きく貢献すると考えられる.

著者関連情報
© 2003 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top