日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
新規非可逆的アロマターゼ阻害薬エキセメスタン(アロマシン®)の薬理学的特性および臨床効果
田原 誠野村 俊治橋本 宗弘
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2003 年 122 巻 4 号 p. 345-354

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抄録

アロマターゼは,エストロゲン生合成の最終段階を担う律速酵素で,特に閉経後乳癌のホルモン療法における標的酵素として注目されている.エキセメスタン(アロマシン®)はこのアロマターゼに対するステロイド系非可逆的阻害薬で,閉経後乳癌の治療薬として2002年7月に承認された.In vitro試験において,エキセメスタンはヒト胎盤等のアロマターゼを阻害した.その阻害活性はNADPH存在下での前処理時間に依存して増強し,かつ非可逆的であったことより,エキセメスタンはアロマターゼによって偽基質として認識されて共有結合し,アロマターゼを不活化するという作用機序を有することが示唆された.エキセメスタンの阻害作用はアロマターゼに選択的で,他のステロイド合成系酵素の活性に対してはほとんど影響しなかった.In vivoの検討において,エキセメスタンはPMSGで刺激したラットの卵巣アロマターゼ活性を阻害し,同時に血漿中エストラジオール濃度を低下させた.DMBA誘発ラット乳癌モデルを用いた抗腫瘍効果の検討では,通常の乳癌モデル(閉経前モデル)および卵巣を摘出してテストステロンで腫瘍を維持した閉経後モデルのいずれにおいても,エキセメスタンは抗腫瘍効果を示した.またエキセメスタンは,ステロイド骨格を有しながらも,in vitroおよびin vivoの検討において,弱いアンドロゲン様作用を示した以外,他の各種ホルモン様および抗ホルモン作用を示さなかった.閉経後乳癌患者を対象として本邦で実施された前期第II相臨床試験では,1日25 mgの経口投与で全症例において31.4%,ホルモン療法耐性の症例においても26.1%の奏効率を示し,血中エストロゲン濃度も投与期間中にわたって顕著に低下した.後期第II相試験においてもエキセメスタンは24.2%の奏効率を示し,非臨床における薬理効果がヒトにおいても確認されたのと同時に,海外臨床試験成績が日本人に外挿可能であることが示された.

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