日本薬理学雑誌
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ミニ総説号「PGD2とその関連生体分子の生理と薬理」
アレルギーとPGD2
平井 博之
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2004 年 123 巻 1 号 p. 15-22

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抄録

アレルギー炎症の惹起細胞として知られているマスト細胞は,その細胞表面の高親和性IgE受容体を介して結合している特異的IgEに,生体内に侵入してきた特異的抗原が結合し架橋すると,活性化し様々なメディエーターを分泌する.その結果,気管支収縮,粘液分泌の亢進,血管透過性の亢進,2型ヘルパーT(Th2)細胞,好酸球,好塩基球らの炎症細胞の集積など,いわゆるアレルギー炎症を引き起こす.プロスタグランジンD2(PGD2)は活性化したマスト細胞が分泌する主要なプロスタノイドであるが,アレルギー炎症における機能については不明な点が多かった.しかし,最近の研究によりアレルギー炎症に促進的に働くことが示されてきている.PGD2はおもに受容体を介して作用を発揮し,PGD2受容体としてDP受容体とCRTH2が報告されている.この2つの受容体はシグナル伝達系が全く異なり,違った機能を持っているが,協調的作用によってアレルギー炎症の形成と進展に関与していると推測される.そのため,PGD2およびその受容体はアレルギー克服のための新たなターゲットとしての期待がもたれる.

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© 2004 公益社団法人 日本薬理学会
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