日本薬理学雑誌
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新薬開発状況
アレルギー疾患治療薬の開発状況
大森 健守足立 圭真部 治彦原田 大輔大島 悦男
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2004 年 123 巻 5 号 p. 335-348

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抄録

近年,気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患については多くのガイドラインが作成され,その診断法,病型分類,治療法が標準化されてきた.しかし,種々の要因によりアレルギー疾患患者数は増加する傾向にあり,新しい薬物の登場がまたれている.アレルギー疾患の病態解明において,肥満細胞が即時相のみならず炎症惹起因子を産生しアレルギー性炎症発現に重要な役割を演じていること,抗原提示細胞である樹状細胞の重要性が認識されてきたこと,ケラチノサイトなどの組織構成細胞も炎症細胞の標的になるだけでなくそれ自身サイトカインなどのアレルギー惹起物質を産生すること,神経ペプチドもアレルギー疾患発症に関係することなどの知見が蓄積されてきた.これらの新知見をもとに,IgE中和抗体,インターロイキン(IL)-4やIL-5などのTh2サイトカインやケモカインの中和抗体,デコイ受容体や受容体抗体,およびそれらの産生を阻害するアンチセンス療法,細胞接着分子に作用する薬物などが現在開発されている.また,ホスホジエステラーゼ4阻害薬,ケラチノサイトに直接に作用するCX-659Sなどの薬物,神経ペプチドであるタキキニンの受容体拮抗薬が多くの製薬企業において精力的に開発されている.抗アレルギー薬として汎用されているヒスタミンH1受容体拮抗薬もアレルギー性炎症に対する抑制作用を有することが明らかになってきた.以上のように,アレルギー疾患の病態解明は新しい治療薬の開発に直結するので,さらなる基礎研究の進歩を望む次第である.

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© 2004 公益社団法人 日本薬理学会
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