2004 年 123 巻 6 号 p. 421-427
アルツハイマー病(Alzheimer's disease, AD)の治療薬としてアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が登場し,認知機能の改善等に貢献している.ADによる重度の痴呆に対する臨床試験も,NMDA(N-methyl-D-aspartate)受容体のチャネル阻害作用を有する薬物を用いて本邦で進行中である.近年,アミロイドβペプチド(amyloid β peptide, Aβ)量を低下させる薬物をADの治療薬に応用する試みが広がっており,その筆頭がβおよびγ-セクレターゼ阻害薬である.これらはAβの生成だけでなく他の生理的シグナルにも関わるプロテアーゼのため,阻害薬開発にはAβ生成活性に選択性を有することが前提とされており,そのような化合物を探索中である.一方,ある種の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などはこの条件を満たしており,AD治療に有効とされる種々の作用を併せ持つNSAIDの直接的な応用,あるいはそのようなNSAIDを基盤とした新規化合物の創製も期待されている.