日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
長時間作用型アンジオテンシンII受容体拮抗薬,テルミサルタン(ミカルディス®)の薬理学的特性および臨床効果
茶珍 元彦大村 剛史林 直之西村 洋一郎佐藤 壽
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2004 年 124 巻 1 号 p. 31-39

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抄録

テルミサルタン(ミカルディス®)は,ベーリンガーインゲルハイム社で合成·開発されたアンジオテンシンII(AII)タイプ1受容体拮抗薬であり,優れた降圧効果の持続を特長とする.受容体結合実験において,テルミサルタンはAT1受容体に選択的な親和性を示し,AT1受容体からの解離は類薬と比較し遅い.また摘出大動脈標本において,テルミサルタンはAIIによる血管収縮の最大反応を減少させるinsurmountableな拮抗作用を示し,その作用は標本洗浄後2時間以上持続する.AT1受容体からの遅い解離およびinsurmountableな拮抗作用はテルミサルタンの降圧効果持続性の要因と考えられる.テルミサルタンは,種々の高血圧モデル動物において用量依存的かつ持続的な降圧作用を示す.腎血管性高血圧ラットでのテルミサルタン1 mg/kg単回経口投与時の降圧作用は22時間以上持続する.また,高血圧自然発症ラットでは,テルミサルタン3 mg/kg 5日間反復経口投与で有意な降圧作用を示し,休薬時のリバウンド現象は観察されない.本態性高血圧症患者におけるテルミサルタンのtrough/peak比は80%以上と高く,1日1回投与で血圧日内変動に影響を与えることなく24時間にわたり降圧効果が持続することが確認されている.本態性高血圧症患者を対象とした第III相臨床試験においても,優れた降圧効果(有効率76.0%)と対照薬と比して優れた安全性が示されている.テルミサルタンの血漿中消失半減期は20~24時間と類薬と比較し長く,これもテルミサルタンの長い作用持続性の要因であると思われる.降圧薬の作用持続性は,早朝起床時に認められる急激な血圧上昇(morning surge)時に好発する心血管系事故の予防に重要と考えられることより,降圧効果の持続性に優れたテルミサルタンは,臨床において有用な降圧薬として期待される.

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