日本薬理学雑誌
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実験技術
膵島β細胞の単離と機能解析法
加計 正文出崎 克也矢田 俊彦
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2004 年 124 巻 5 号 p. 345-352

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抄録

血中グルコース濃度の調節は,最も基本的な生体ホメオスタシスの一つである.グルコース濃度の変化に応じて,膵β細胞からインスリンが放出される.この機構の破綻はインスリン分泌不全と糖尿病をきたす.インスリン分泌細胞であるβ細胞は膵ランゲルハンス島細胞の約70%を占めるがα,δ,PP細胞も混在しており,β細胞の解析は直接インスリン分泌制御機能の解析となり得る.インスリン分泌は,β細胞の細胞質Ca2+濃度により制御されており,蛍光指示薬を用いた蛍光画像解析により,Ca2+の細胞内分布や濃度変化をリアルタイムで測定することが出来る.さらに,細胞内グルコース代謝をNAD(P)Hの自家蛍光として測定することが出来る.また,β細胞は様々なイオンチャネルや受容体チャネルを発現しており,イオンチャネル活動はグルコース代謝情報を電気情報に変換する.パッチクランプ法を用いた電気生理学的解析により,各種イオンチャネル活性および膜電位変化を直接測定することが出来る.β細胞の細胞株として,HIT細胞,MIN6細胞,INS1細胞,RIN細胞,βTC細胞などが用いられているが,必ずしも正常なグルコース応答能を保持していない.したがって,β細胞の生理学的機能解析には,正常動物または病態動物からの初代培養系が要求される.コラゲナーゼを用いた膵島単離法ならびに単一β細胞の調製法は,小動物から大動物まで応用可能であり,生理的グルコース応答能を保持したβ細胞を得ることが出来る.この初代培養β細胞を用いることにより,細胞内情報伝達系の解析ならびに薬効評価を行うことが可能となり,今後,病態機能の解析など様々な応用が期待できる.

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© 2004 公益社団法人 日本薬理学会
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