日本薬理学雑誌
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ミニ総説:トランスポーター▼研究の最前線
オーバービュー:薬物トランスポーターの分子多様性,組織特異性,遺伝子多型
杉山 雄一前田 和哉
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2005 年 125 巻 4 号 p. 178-184

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抄録

近年,トランスポーターのクローニング,機能解析が進むにつれて,トランスポーターの広範な基質認識性に加え,多くの薬物を輸送することが明らかとなり,薬物動態におけるトランスポーターの重要性がクローズアップされてきた.トランスポーターは,薬物吸収を司る小腸,薬物の排泄を担う肝臓や腎臓,また,脳・中枢を保護するため,物質の膜透過を制限する血液脳関門・血液脳脊髄液関門など広範な組織に発現が認められる.そのため,トランスポーターは,吸収・排泄に関与して全身の薬物動態を制御する因子として働くのみならず,局所の薬物の分布も制御していることが考えられてきた.また,トランスポーターは,組織特異的に発現するものも見られ,特定の臓器に薬物を送達するターゲットとして有効であると考えられる.従って,代謝酵素と並んで,トランスポーターへの基質認識・輸送特性を理解することは,薬物動態の至適化や標的指向化を行うにあたって重要な情報となる.また,これらトランスポーターを介した薬物間相互作用や遺伝子多型,病態や相互作用薬による発現変動などによる機能変化があることが報告されてきた.従って,個々の薬物についてこのような機能変動が薬物動態・薬効・副作用にどのような影響を与えるかを解析する必要性が出てきている.そのためには,in vitro発現系などの実験結果からin vivoにおける動態を定量的に予測する方法論,ヒトin vivoにおいて個々のトランスポーターの機能を推定するprobe drugの開発などトランスポーター研究の基盤作りとともに,より臨床における事例を明らかにしていくことによりさらに臨床医療におけるトランスポーターの重要性が明らかになるものと考えられる.

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