日本薬理学雑誌
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ミニ総説:トランスポーター▼研究の最前線
医薬品の探索・開発におけるトランスポーター研究
水野 尚美丹羽 卓朗
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2005 年 125 巻 4 号 p. 200-206

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抄録

薬物トランスポーターは生体内の様々な臓器に発現し,薬物の輸送に関わっている.近年,多くのトランスポーター分子が同定されると共にその機能解析が急速に進み,薬物の体内動態を決める重要なファクターの一つであることが明らかになってきた.そのため,医薬品開発の面からもトランスポーター研究への関心が高まっている.本稿ではP糖タンパク(P-gp)と有機アニオントランスポーター(OATP-C)を例に,我々のトランスポーター研究への取り組み事例を紹介する.幅広い基質認識性を有するP-gpは,薬物の中枢移行性に重要な役割を果たしている.P-gp基質になる場合,P-gpにくみ出されるため中枢移行性は著しく低下する.中枢移行性を確保するためには,P-gpの基質にならない化合物を選択するべきである.In vitro評価系としては遺伝子導入細胞を用いた経細胞輸送系が,in vivoでのP-gpの寄与を見積もるにはノックアウトマウスが,一般的に用いられている.ヒトOATP-Cは肝血管側膜に発現し,種々有機アニオンの肝取り込みに重要な役割を果たしている.OATP-Cは肝臓に特異的に発現していることから,肝ターゲッティングに利用できると考えられる.このようにトランスポーターの輸送特性を考慮して動態特性の至適化を図ることが,効率よい医薬品開発につながると考えられる.

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© 2005 公益社団法人 日本薬理学会
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