日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
閉経後骨粗鬆症治療薬,塩酸ラロキシフェン(エビスタ®錠60 mg)の薬理作用と臨床成績
小林 裕幸浜谷 越郎
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2005 年 125 巻 1 号 p. 37-48

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抄録

塩酸ラロキシフェン(エビスタ®)は,米国イーライリリー社によって発見,開発されたベンゾチオフェン骨格を有する選択的エストロゲン受容体モジュレーター(Selective Estrogen Receptor Modulator:SERM)である.塩酸ラロキシフェンはラットおよびサルの卵巣切除(OVX)モデルにおいて腰椎,大腿骨などの骨密度の低下を抑制し,また,腰椎,大腿骨などにおいて,OVXによって生じる骨強度の低下を抑制した.塩酸ラロキシフェンは強力な骨吸収抑制作用によって骨吸収,骨形成のバランスを再構築し,それに基づいた骨微細構造の改善の結果,骨強度の回復を伴った骨量維持効果を発揮すると推察された.以上のような効果は長期投与においても保持された.また,塩酸ラロキシフェンは骨折治癒過程に悪影響を及ぼさなかった.更に,塩酸ラロキシフェンは骨に対する効果を発揮する用量において,血清総コレステロール低下作用を示した.一方,塩酸ラロキシフェンは単独で明らかな子宮刺激作用を示さず,エストロゲンによる刺激に対して拮抗作用を示した.さらに,乳腺組織に対しても培養細胞系および化学的に誘発した乳腺腫瘍動物モデルにおいて腫瘍細胞増殖に対して阻害作用を示した.このような薬理作用プロファイルに起因した特徴的な組織選択的作用は閉経後女性を対象とした一連の臨床試験によって確認されており,塩酸ラロキシフェンが閉経後骨粗鬆症の治療薬として承認されている唯一のSERMであるということが理解される.

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© 2005 公益社団法人 日本薬理学会
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