日本薬理学雑誌
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総説
2型糖尿病治療におけるジペプチジルペプチダーゼ-IV
阻害薬の可能性
安田 信之山崎 一斗井上 敬長倉 廷
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2005 年 125 巻 6 号 p. 379-384

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抄録

インクレチンは,栄養素の刺激により腸管から分泌され,膵β細胞でのグルコース刺激によるインスリン分泌を増強させるホルモンの総称である.その中で,血糖調節因子として最も注目されているのが,グルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1,GLP-1;GLP-1(7-36)amideあるいはGLP-1(7-37))である.GLP-1は腸管に存在するL細胞から分泌されるが,速やかにジペプチジルペプチダーゼ− IV(dipeptidyl peptidase-IV,DPP-IV)により不活化される.GLP-1は,グルコース依存的なインスリン分泌の亢進ばかりではなく,グルカゴンの分泌抑制,胃排泄の抑制,膵β細胞の保護および増殖作用にも関与する.さらに,視床下部に作用して摂食を抑制し,結果として体重増加を抑制する.これら一連の作用は,2型糖尿病の治療において非常に望ましい.そのため,GLP-1作用増強をターゲットとした創薬は,次世代の2型糖尿病治療薬として注目されている.中でも,内因性GLP-1の半減期を延長させ,GLP-1作用増強を狙ったDPP-IV阻害薬の臨床開発が多くの製薬メーカーによって実施されている.最近,DPP-IV阻害薬であるLAF237が,忍容性および安全性に優れ,2型糖尿病患者の空腹時血糖および食後高血糖を改善させることが報告された.以上のことより,DPP-IV阻害薬は,GLP-1の多様な作用をもたらす新しいタイプの経口糖尿病治療薬として期待されている.

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© 2005 公益社団法人 日本薬理学会
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