日本薬理学雑誌
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特集:ストレスと脳
精神疾患モデルマウスはストレスに弱いか?
宮川 剛山崎 信幸
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2005 年 126 巻 3 号 p. 189-193

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抄録

著者は,遺伝子改変マウスに対して網羅的行動テストバッテリーを行うことで,脳に発現する遺伝子の行動レベルでの機能についての研究を行ってきた.近年,マサチューセッツ工科大学の利根川らとの共同研究によって,前脳特異的カルシニューリン(CN)ノックアウトマウスが統合失調症様の表現型異常を示すこと,また統合失調症患者のDNAを用いた関連解析からカルシニューリンAのγサブユニットの遺伝子,PPP3CCの特定のハプロタイプが統合失調症と関連を示すことから,脱リン酸化酵素のカルシニューリンが統合失調症の感受性遺伝子であろうことを報告した.この知見に基づき著者らは,統合失調症の発症にCNが関与するシグナル伝達経路の異常が関わっているとする「統合失調症のカルシニューリン仮説」を提唱している.ここでは,宮川らが報告した前脳特異的CNノックアウト(CN-KO)マウスの統合失調症様の表現型異常を中心に統合失調症とCNとの関連について解説する.このマウスでは,不安様行動も顕著に亢進しており,環境の変化に弱いなど,ストレスに対する感受性も亢進していると考えられるが,精神疾患のストレス脆弱性仮説との関連についても議論する.

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