日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
新規HMG-CoA還元酵素阻害薬ロスバスタチンカルシウム(クレストール®)の薬理作用と臨床効果
大藤 和美矢野 誠一山口 基徳Graham Smith平田 雅子嶋田 斉出石 公司品川 丈太郎松永 和樹
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2005 年 126 巻 3 号 p. 213-219

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抄録

ロスバスタチンカルシウム(クレストール®)は,既存の化合物に比べてより強い低比重リポタンパクコレステロール(LDL-C)低下作用と高い肝選択性を目指し合成・開発された新規のHMG-CoA還元酵素阻害薬であり,親水性を示す薬物である.本剤は作用部位である肝臓のHMG-CoA還元酵素を,既存のHMG-CoA還元酵素阻害薬に比較してより強力に阻害し,肝コレステロール合成を強力に抑制した.ラットにおけるコレステロール合成阻害作用には肝臓に対する特異性が認められ,有機アニオントランスポーターを介する肝選択的な組織移行が寄与していると考えられた.HepG2細胞において,LDL受容体mRNAを濃度依存的に誘導し,LDL結合活性を増加させた.動物モデルで,血中コレステロールおよびトリグリセリドを低下させ,動脈硬化病変の進展を抑制した.また,各種動物モデルで脳虚血保護作用,血管保護作用,抗血栓作用および腎保護作用などの多面的作用(pleiotropic effects)も示唆された.臨床試験では,日本人で第I相試験,並びにブリッジング試験と位置付けた第II相試験を実施し,海外で実施された第III相試験結果に基づいて承認を取得した.外国人を対象とした試験において,本剤は,5,10 mg/日でLDL-Cをそれぞれ41.9%,46.7%低下させ,5,10 mg/日でそれぞれ67%,82%の高いLDL-C管理目標値到達率を示した.更に,5,10 mg/日で,トリグリセリドをそれぞれ16.4%,19.2%低下させ,高比重リポタンパクコレステロール(HDL-C)をそれぞれ8.2%,8.9%上昇させた.以上,本剤は,優れた脂質改善作用を有し,かつ,臨床試験における副作用の程度および種類は既存のHMG-CoA還元酵素阻害薬と同程度であったことから,高コレステロール血症の治療に貢献することが期待される.

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© 2005 公益社団法人 日本薬理学会
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