日本薬理学雑誌
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総説
レクチン様酸化LDL受容体における新たな展開とその臨床的意義
井上 信孝藤田 佳子沢村 達也
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2006 年 127 巻 2 号 p. 103-107

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抄録

酸化ストレスは,活性酸素産生系/消去系の不均衡にて生じる.亢進した酸化ストレスは,内皮傷害の直接的な要因であり,また一方でLDLの酸化的修飾により生成された酸化LDLを介して内皮機能障害をきたす.酸化LDLは,内皮機能障害因子として心血管病のinitiatorとして働くだけはなく,promoterとしても機能する.酸化LDLは,レクチン様酸化LDL受容体(lectin-like oxidized LDL receptor-1:LOX-1)を介した系にて種々の細胞反応を引き起こす.LOX-1は,内皮細胞だけではなく,血管平滑筋細胞,炎症細胞など様々な細胞種に発現を認め,その発現は様々な条件下,刺激により,ダイナミックに調節されている.LOX-1は,酸化LDLだけではなく,アポトーシスの陥った細胞,老化赤血球,炎症細胞などを認識し,生体防御機構や炎症性機転などの様々な生命現象において重要な役割を果たしていることが明らかになった.最近,幅広い分野においてLOX-1の病態生理学的意義に関する研究が展開されており,高脂血症下での内皮機能障害だけではなく,血管バルン傷害後の内膜肥厚,糖尿病血管病変,敗血症,急性冠動脈症候群などの種々の病態形成に深く関与している可能性が示された.今後,LOX-1をターゲットにした薬剤の開発が,酸化ストレスを基盤とした病態の理解,さらには新たな治療戦略の構築につながる可能性がある.

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© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
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