日本薬理学雑誌
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治療薬シリーズ (1) うつ病
うつ病と脳由来神経栄養因子(BDNF)
橋本 謙二
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2006 年 127 巻 3 号 p. 201-204

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抄録

近年,自殺の増加が社会問題になってきており,年間3万人以上の方が,自ら命を絶っている.自殺の原因の一つが,代表的な精神疾患のうつ病であるといわれている.うつ病の治療には,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)等の抗うつ薬が使用されている.SSRIの急性の薬理作用は前シナプスに存在するセロトニントランスポーターを阻害することにより,シナプス間隙のセロトニン量を増加させることであるが,治療効果の発現には数週間を要することが知られている.一方,SSRIのセロトニン神経系における作用は投与直後に認められることから,セロトニン神経系に直接に作用するだけでなく,細胞内の様々なシグナル伝達系に関わる転写因子制御の分子メカニズムが注目されている.本稿では,うつ病の病態および抗うつ薬の作用メカニズムにおける脳由来神経栄養因子(BDNF)の役割に焦点を当て,最新の知見について解説する.

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© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
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