日本薬理学雑誌
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特集:腫瘍選択性とアポトーシス
腫瘍選択性の高い物質の探索:アポトーシス誘導活性との相関
坂上 宏
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2006 年 127 巻 5 号 p. 322-328

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抄録

癌とは,遺伝子の病気であり,遺伝子変異による正常な機能の喪失に続き発生する.多くの治療薬や予防薬が癌細胞に,アポトーシスと類似の形態変化を惹起することから,抗腫瘍薬の生理活性の1つとしてアポトーシス誘導活性を確認することが重要視されてきた.最近,幾つかの抗腫瘍薬が,癌細胞に,オートファジーなどアポトーシス以外の細胞死を誘導することが明らかになりつつあり,従来の研究の進め方を検討する必要性が生じた.従って,新規抗癌薬開発の戦略としては,先ず腫瘍選択性の高い物質を探索することから出発し,次に,細胞死のタイプや,細胞死誘導の機構を解明することが賢明であると思われる.このような視点に立ち,今回,ランダムに選ばれた多種の天然および合成有機化合物の腫瘍選択性と,アポトーシス誘導との相関を,主として我々の研究を中心にまとめた.

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© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
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