日本薬理学雑誌
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治療薬シリーズ (3) 高血圧症
高血圧治療薬の基礎:開発中の高血圧治療薬
吉川 公平
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2006 年 127 巻 5 号 p. 381-386

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抄録

高血圧症の薬物療法は,他の疾患と比較して医療満足度の高い領域である.しかしながら,高血圧患者数は年々増加していること,未治療患者の割合が多いこと,既存薬に抵抗性を示す患者が存在することなどから,新規作用機序を有する高血圧治療薬の出現にも期待が寄せられている.現在,選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬(エプレレノン),レニン阻害薬(アリスキレン),アンジオテンシン変換酵素(ACE)/中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害薬(AVE7688)などが,新規作用機序を有する高血圧治療薬として臨床開発の後期段階に進んでいる.エプレレノンはMRを選択的に遮断することにより,アルドステロンによるNa+蓄積/K+排泄,体液貯留,炎症惹起,細胞増殖などを抑制し,心血管保護作用の強い高血圧治療薬として期待されている.アリスキレンはレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系を上流で阻害することにより,既存のACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)と異なった血中RAA系マーカーの変化を示し,薬効や副作用軽減などにおいて特有のプロファイルを示すことが期待されている.AVE7688は,ACE阻害薬と比較してブラジキニンやNa+利尿ホルモンなどを介した組織保護作用が強く,糖尿病性腎症などへの適応も期待されている.その他,ウワバイン拮抗薬,エンドセリンA型受容体拮抗薬なども新規作用機序を有する高血圧治療薬としての可能性が試みられており,今後の進展が注目されている.

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