日本薬理学雑誌
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特集:副作用の薬理
肝機能障害
池田 敏彦
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2006 年 127 巻 6 号 p. 454-459

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抄録

薬物性肝障害には,用量依存的で動物実験でも再現される非特異体質性肝障害と,動物実験では再現できない特異体質性肝障害が知られている.両者とも化学的に反応性の高い代謝物の生成が最初の引き金であると考えられている(一次反応).これに続いて,大部分は未解明のままであるものの,免疫システムの活性化が原因であると考えられ,非特異体質性肝障害では自然免疫システムが,特異体質性肝障害ではこれに加えてアレルギー反応や自己・非自己認識に関わる免疫システムが関与すると推察される(二次反応).アセトアミノフェンに代表される非特異体質性肝障害においては,反応性代謝物による細胞傷害と細胞ストレスが進行すると,クッパー細胞が細胞傷害性リンパ球を肝臓に動員し,これらの細胞からインターフェロンγが分泌されることによって種々サイトカインの産生が刺激されることが,肝障害発現に重要な鍵となると考えられている.一方,特異体質性肝障害については,二次反応が重きをなすと推察されており,臨床像からはハロセンに代表されるアレルギー性特異体質性肝障害とトログリタゾンに代表される代謝性特異体質性肝障害に分類される.前者は薬疹,発熱および好酸球増多などのアレルギー症状を伴い,薬物曝露から比較的短期間(1カ月以内)に発症するのに対し,後者ではこのような症状が無く,発症までに長期間を要する点で異なっている.ハロセンの場合,反応性代謝物でハプテン化されたタンパク質に対する数多くの抗体が生じており,その種類によってはアレルギー性反応の原因となっているものと考えられる.代謝性特異体質性肝障害では恐らくこのような抗体が少量であるか,あるいは産生していないと推察される.しかし,2種類の特異体質性肝障害とも,反応性代謝物で化学修飾されたタンパク質が,免疫系により非自己と認識されることが肝障害の原因ではないかと推察される.

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