日本薬理学雑誌
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特集:遺伝子改変マウスの作製法
トランスジェニックマウス作製技術
鈴木 操
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2007 年 129 巻 5 号 p. 325-329

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抄録

ヒトゲノムの解読が終了し,遺伝子の存在は塩基配列から予測できるようになった.しかしながら,遺伝子の機能を塩基配列のみから予測することは困難である.そこで,遺伝子の機能を個体レベルで解析する技術として,マウス個体へ遺伝子を導入する遺伝子改変マウス作製技術が有効である.遺伝子改変マウスは,その作製方法によって,トランスジェニックマウス(外来遺伝子導入マウス,以下,Tgマウス)と遺伝子ターゲッティングマウスに分類される.Tgマウスは目的のタンパク質をコードする遺伝子,またはそのcDNAを含む外来遺伝子をマウスの受精卵に注入して作製され,個体での外来遺伝子の機能解析を目的としている.一方,遺伝子ターゲッティングマウスは,遺伝子ターゲッティングにより胚性幹細胞を用いたキメラマウス作製により作製されるマウスで,特定の内在性遺伝子を外来性のDNA断片で置換することにより,もとの遺伝子の機能を欠失または変異させる.遺伝子の機能を欠失したマウスをノックアウトマウス(以下,KOマウス)という.本稿では,Tgマウスの作製技術について解説する.Tgマウスの作製は,マウスには本来存在していない外来遺伝子の導入により発現を付与する,機能付与型である.現在,Tgマウス作製は,前核期受精卵への外来遺伝子のマイクロインジェクションによる方法が最も一般的に使用されている.なお,Tgマウス作製技術には,受精卵の体外培養,受精卵の卵管内移植および体外受精などの発生工学的基盤技術が不可欠である.Tgマウス作製技術は,現在,遺伝子の機能解析のみならず,疾患モデル動物として病態解析や治療薬開発などに応用され,生物学・医学・薬学を含む多くの分野で最も基礎的,かつ重要不可欠な技術となっており,今後も発展し続けるものと期待される.

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