2007 年 113 巻 4 号 p. 146-157
対馬北部に分布する対州層群中には,スレートへき開が観察されない泥岩(0-クラス)から初期的スレートへき開として局所的にcleavage domainsがみられるもの(I-クラス)と顕微鏡下の全域においてcleavage domainsが発達するもの(II-クラス)が認められる.泥岩中にはchlorite-mica stacksが観察され,スレートへき開発達に伴い変形を受け,変形が強くなるに従ってその厚さも厚くなっている.これはchlorite-mica stacksがへき開方向に成長したものと推定される.各クラスのイライト結晶度(IC値)から,0-クラスの試料はmetapelitic zoneのlate diagenetic zoneからlow anchizoneに,IとII-クラスの試料はlow anchizoneに相当すると推定される.スレートへき開形成時には地温勾配は通常より高かったと予想され,日本海拡大の展張場の温度がスレートへき開形成時にもほぼ維持されていたと見なすことができる.