日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
生活機能の自立した高齢者における閉じこもり発生の予測因子
渡辺 美鈴渡辺 丈眞松浦 尊麿樋口 由美渋谷 孝裕臼田 寛河野 公一
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2007 年 44 巻 2 号 p. 238-246

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抄録

目的 高齢期における閉じこもりは要介護リスクである.本研究は閉じこもり予防を目指して,生活機能の自立した在宅高齢者における閉じこもり発生の予測因子を明らかにすることを目的とした.方法 平成12年10月,兵庫県五色町に在住する65歳以上の在宅高齢者2,932人に自記式,記名の質問紙調査を行った(回収率は83.9%).その内,年齢が85歳未満,介護保険未利用,基本的日常生活動作や生活機能(老研式活動能力指標)が自立し,ひとりで遠出でき,閉じこもりでない高齢者787人を平成15年3月(30カ月)まで追跡した.追跡可能であった732人(男性313人,女性419人)を対象に,閉じこもり発生を予測する心理的,身体的,生活・社会的要因を,年齢補正したステップワイズ法による多重ロジスティック回帰分析を用いて性別に解析した.閉じこもり判定は外出頻度を用い,1週間に1回程度以下の外出しかしない者を「閉じこもり」とした.結果 生活機能自立の在宅高齢者の追跡30カ月後の閉じこもり発生率は,男性14.4%,女性26.0%であった.多重ロジスティック回帰分析を用いた閉じこもり発生の予測因子として,男性では「友人・近隣・親族との交流頻度」, 「下肢の痛み」, 「体重や筋肉の減少感」が,女性では「友人・近隣・親族との交流頻度」, 「下肢の痛み」, 「健康度自己評価」が抽出された.男女とも友人・近隣・親族との交流頻度が少ないこと,下肢に痛みがあることが共通して閉じこもり発生の予測因子であった.結論 生活機能の自立した在宅高齢者では,友人・近隣・親族との交流頻度が低い人,つまり人からの孤立状態にある人,また,足や膝に痛みのある人が閉じこもりに移行しやすいと考えられる.

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© 2007 一般社団法人 日本老年医学会
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