日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
インスリン導入が遅れ高血糖高浸透圧昏睡を来たした高齢者糖尿病の1例
川上 明夫中江 吉希豊島 堅志今井 豊金子 英司下門 顕太郎
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2007 年 44 巻 6 号 p. 756-760

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抄録

症例は79歳女性.アルツハイマー型痴呆,パーキンソン病の診断にて治療中.7年前より,かかりつけ医にて2型糖尿病の診断にて経口血糖降下薬を処方されていた.2006年3月より,頻尿·多尿出現.4月3日に発熱を認め飲食が困難となり,4日朝嘔吐し当科を受診中に意識レベル低下(JCS II-30)を認め緊急入院となった.血液検査にて,血糖676mg/dl, Na 153mEq/l, HbA1c 9.7%,尿ケトン体陰性,動脈血pH 7.42であり,高血糖高浸透圧昏睡と診断された.生理食塩水による脱水·高Na血症の補正,速効型インスリンの持続静注により,第3病日までには意識障害の改善を認めた.その後も経口摂取が困難であったため経管栄養を行ったが,血糖コントロールに一日46単位のインスリンを要し,入院以前より血糖コントロールにインスリンが必要な状態だったと考えられた.高齢糖尿病患者でインスリンが必要な者の相当数が,何らかの理由でインスリン治療を受けていないと考えられ,その実態·対処法に関して議論が必要と考えられた.

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© 2007 一般社団法人 日本老年医学会
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