日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
地域一般住民高齢者におけるメタボリックシンドローム,インスリン抵抗性と尿中微量アルブミンとの関連―端野·壮瞥町研究―
田辺谷 徹也大西 浩文斎藤 重幸赤坂 憲三俣 兼人千葉 瑞恵古堅 真森 満島本 和明
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2008 年 45 巻 3 号 p. 302-307

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抄録

目的:地域一般住民高齢者におけるメタボリックシンドローム(MetS)およびインスリン抵抗性と尿中微量アルブミン(U-Alb)の関連を端野·壮瞥町住民健診受診者のデータより検討した.方法:2005年度端野·壮瞥町住民健診受診者において,糖尿病の者(空腹時血糖≥126 mg/dlまたは治療中),降圧剤内服中の者,さらに顕性蛋白尿(尿中アルブミン·クレアチニン比(ACR)≥300 mg/g·Cr)を認める者を除外したうちの,65歳以上の高齢者338名を対象とした.我が国の診断基準によりMetS群と非MetS群の2群に分け,U-Alb陽性者(ACR≥30 mg/g·Cr)の頻度を比較した.またインスリン抵抗性の指標としてHOMA-Rを用い,HOMA-RとU-Alb陽性との関連も検討した.結果:U-Alb陽性頻度は,MetS群において非MetS群と比較して有意に高値を示した(23.3% vs. 9.4%,p=0.018).また,U-Alb陽性を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析より,MetSと判定される者は約3.1倍(95%CI:1.18∼8.07)のU-Alb陽性のリスクがあることが示された.同様の多重ロジスティック回帰分析においてHOMA-Rと収縮期血圧値(SBP)を独立変数として用いた場合,HOMA-RとSBPはそれぞれ独立したU-Alb陽性の有意な説明変数として採択された.結論:今回の検討より地域一般住民高齢者において,MetSとHOMA-RはU-Alb陽性に対する有意なリスクであることが示された.微量アルブミン尿予防の観点からは,血糖·血圧の管理はもちろんのこと,上流にあるインスリン抵抗性への介入も併せて行うことが重要である可能性が示唆された.

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© 2008 一般社団法人 日本老年医学会
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