日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
当センター在宅医療支援病棟における歯科診療の必要性と地域連携に関する研究
角 保徳小澤 総喜三浦 宏子三浦 久幸鳥羽 研二
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2011 年 48 巻 4 号 p. 391-396

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抄録

目的:本研究の目的は,国立長寿医療研究センターの在宅医療支援病棟患者の口腔内の状態や口腔ケアの必要性を調査し,在宅療養患者の現状と問題点を把握することである.退院後も継続的な口腔管理の必要な患者を地域の在宅歯科医療が可能なかかりつけ歯科診療所に紹介し,その適否や問題点を抽出し,在宅患者の口腔管理の必要性と病院を含む地域連携のあり方について検討する.方法:対象は国立長寿医療研究センター在宅医療支援病棟に入院した患者82名である.全身状態および口腔状況を調査し,歯科医師による専門的口腔ケアが必要と判断した患者について,口腔ケア施行時の患者の問題点について調査した.さらに,退院後在宅での継続した専門的口腔ケアの必要な患者をかかりつけ歯科診療所に紹介し,紹介時の問題点を抽出した.結果:多くの対象者に口腔乾燥を認め,歯石の除去や抜歯等の歯科専門的な処置を必要とする患者を多数認めた.対象者のうち38例(46%)ではうがいは不可能であり,23例(28%)で継続した開口が不可能で,口腔機能に障害を認めた.50%の対象者において認知症が認められ,その多くで,口腔ケア実施時での意思の疎通が困難であった.退院後も継続した口腔ケアが必要と判断した対象者43例のうち,かかりつけ歯科診療所へ紹介ができたのは22例(51%)にとどまった.その原因としては,患者,家族および介護関係職種に専門的口腔ケアの必要性が理解されなかったことがあげられた.結論:在宅医療における専門的口腔ケアの必要性が示唆された.シームレスな歯科地域連携へ向けて,医科歯科連携だけでなく,看護・介護専門職や患者ならびに家族に,専門的口腔ケアを啓発する必要性が示唆された.

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© 2011 一般社団法人 日本老年医学会
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