肺癌
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症例
縦隔リンパ節転移が先行し後に肺原発巣が出現した多発肺癌の1例
原 祐郁鈴木 光隆高木 剛佐藤 雄一郎三浦 健次野村 郁男
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2008 年 48 巻 2 号 p. 130-134

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抄録

背景.原発巣不明縦隔リンパ節癌は臨床上稀に経験し報告例も散見されるが,その多くは原発巣が不明のままである.今回,縦隔リンパ節転移より2年半後に原発巣と考えられる肺病変が出現した極めて興味深い多発肺癌症例を経験した.症例.76歳男性.胸部異常陰影にて左肺下葉の腺癌が発見され,左肺下葉切除とND2a郭清を施行した.同時に対側寄りの気管前リンパ節(#3)が腫大しており,縦隔鏡下リンパ節生検で扁平上皮癌の診断を得て,正中アプローチによる縦隔リンパ節郭清を行った.結果2個のリンパ節(#3)に扁平上皮癌がみられた.術前高値を示していたCYFRAも正常値近くまで下がり,外来にて半年に1度のCT検査を行っていたところ,2年半が経過しCYFRAの再上昇とともに右肺上葉に新たに結節影が出現した.縦隔リンパ節転移の原発巣を第一に疑って右肺上葉切除とND1郭清を施行したところ,組織学的に酷似する扁平上皮癌であった.結論.原発巣不明縦隔リンパ節癌は他部位の原発巣不明癌や肺癌のN2症例と比較して予後良好であり,可能であれば積極的な外科的切除が望ましい.また原発巣の出現を念頭に置き慎重に経過観察を行う必要がある.

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© 2008 日本肺癌学会
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