肺癌
Online ISSN : 1348-9992
Print ISSN : 0386-9628
ISSN-L : 0386-9628
症例
胸膜の類上皮血管内皮腫の1例
石川 将史川上 賢三木曾 末厘乃島田 一惠
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2008 年 48 巻 7 号 p. 841-845

詳細
抄録

背景.類上皮血管内皮腫(epithelioid hemangioendothelioma:EHE)は全身のいずれにも発生し得る血管内皮由来の中間悪性の腫瘍で,肺・肝・骨・軟部組織に多い.多彩な臨床・画像所見を呈し,確定診断には組織学的検索を要するため,胸膜原発例の報告は稀である.症例.65歳男性.左肩~胸部痛が徐々に悪化し,画像上左胸水貯留を指摘された.気管支鏡検査,胸水穿刺,局所麻酔下胸膜生検では確定診断が得られなかったため,全身麻酔下に胸腔鏡下左胸膜生検を施行した.び漫性の白色の胸膜肥厚と部分的な胸膜癒着を認め,胸水細胞診では高度異型細胞,術中迅速病理診断では悪性胸膜中皮腫などの悪性病変が疑われたが,術後の病理標本では血管内皮マーカー陽性でEHEと診断された.有効な治療法が確立されていないため,積極的治療は行わずに外来で経過観察した.左胸水の増量と左肺下葉の腫瘤陰影の出現とともに,強い疼痛と呼吸困難を来したため,オピオイドなどの投与や在宅酸素療法を要したが発症後約18ヵ月で死亡した.結論.EHEの臨床経過は多彩であることが知られているが,胸膜発生のEHEは他部位に比して予後が悪く,治療法も確立されていない.予後不良であった胸膜原発のEHE症例を経験したので報告する.

著者関連情報
© 2008 日本肺癌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top