肺癌
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症例
著明な石灰化を伴うリンパ節腫大で再発した肺腺癌の1例
谷口 菜津子大泉 聡史原田 敏之服部 淳夫松野 吉宏西村 正治
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2010 年 50 巻 6 号 p. 816-821

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抄録

背景.原発性肺癌において腫瘍内や転移巣に石灰化を認めることはまれとされ,一般的には石灰化は良性腫瘍を示唆する所見と考えられる.症例.71歳女性.1987年他院で肺腺癌にて右肺下葉切除術を施行され,pT1N2M0 stage IIIAの診断で術後化学療法,放射線療法を受けた.2005年11月にCTで両肺野にスリガラス影の出現を認め特発性器質化肺炎と診断されたが,この時に石灰化を伴う縦隔および腹部リンパ節の軽度の腫大が認められていた.陳旧性リンパ節結核などを疑い経過観察したが,2007年10月のCTでこれらのリンパ節が石灰化の増大を伴って腫大していた.開腹下腹部リンパ節生検を施行したところ,砂粒体を伴った腺癌であり,また免疫染色でthyroid transcription factor-1(TTF-1)をはじめとする複数の肺腺癌マーカーに陽性であったことなどから,最終的に肺腺癌のリンパ節転移再発と診断した.2007年12月よりカルボプラチンとパクリタキセルによる化学療法を開始し,リンパ節は著明に縮小したが石灰化の部位は残存した.結論.著明な石灰化を伴ったリンパ節腫大であっても,肺癌などの悪性疾患の既往がある場合などは,厳重な経過観察や生検による積極的な病理診断が必要である.

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© 2010 日本肺癌学会
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