医療と社会
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委託研究論文
医療現場から見た今日の課題と自助的解
(医療経営研究会報告書)
猶本 良夫
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2008 年 18 巻 3 号 p. 319-326

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抄録

 日本の医療について,今日ほど国民の関心を集める時代は無かったと言えるであろう。国民皆保険制度の導入以来,世界に類をみない優れた医療制度と高い医療技術水準を誇ってきた。しかし,医療の高度化と医師をはじめとする医療専門職の作業量の増加,新しい研修制度の導入による若手医師の流動化,権利意識の変化,高齢社会,経済の停滞などの環境の変化に伴い,徐々にこれまで危ういながらも支えられていたシステムが崩れてきた感が否めない。しかしながら,外的要因にのみ解答を求めることにも問題がある。すなわち,現在,近未来の経済環境からして,医療に多くの支出をすることは困難であり,医療機関の集約と効率的な経営が求められている。さらに,そのためにはこれまで希薄であった病院のマネジメント力の強化が必要で,いかなる行政的な施策がとられようと実効を伴わないことは明らかである。病院は業務改善を通じたマネジメント力の強化とリーダーの育成,医療専門職のマネジメントへの取り込みが喫緊の課題である。そういった先例は欧米の病院,研究にあり,日本における先進的病院にも学ぶ必要がある。高齢社会とそれを支える若年労働者への負荷がこれまでに経験した事のないほど大きくなりつつあり,医療においても同様である。早急にあらゆる対策をしなければ大きな社会不安となってこよう。本稿では,医療現場から見た病院の再生への課題を検討した。

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© 2008 公益財団法人 医療科学研究所
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